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飼い犬の心、飼い主知らず:投影による大いなる勘違い

(最終更新日2022/12/17) 本編に付録2ページがついた全5,800文字。

犬や猫を家族の一員としていっしょに暮らしている方たちは、家族同然のペットたちが、人間みたいな感情や思考を持っているように感じられることも多いと思う。しかし、人間が想像する犬の心は幻想にすぎないと言っているドッグトレーナーがいる。
わたしは、犬や猫だけではなく、飼っている亀や鯉と心が通じている人も知っている。みなさんはどう思われるだろうか。

犬を擬人化することを全否定しているこんな記事を見つけましたけど、どう思いますか?

これは、心理学にも関係する面白い話なので、ブログで紹介させてもらいますね。

その記事は、犬を知り尽くしているドッグトレーナーが書いた本からの抜粋だった。「犬はあくまで動物であり、常に本能で動いている。人間側の一方的な思いや価値観で犬と接してはいけない。」という内容で、あの有名な「忠犬ハチ公」の美談もバッサリ切っている。

以下、鹿野正顕(しかの・まさあき)氏のご意見です。鹿野さんは「人と犬の関係学」の分野で日本初の博士号を取得した「犬の行動学のスペシャリスト」で、プロのドッグトレーナーたちが教えを乞うような方であるとのことです。

犬は人間と違う世界で生きている

●犬と家族同様に暮らしていくうちに、犬も人と同じようにものを見たり聞いたりし、人と同じような感情を持つように思い込んでしまうものだが、実際には、同じ空間で生活していても、犬は人間とは違う世界で生きている。

●犬は「頭がいい・かしこい動物」とされているが、大脳皮質のうち前頭葉の占める割合は、人の30%に対して、犬は7%(ネコは3%)しかない。つまり、犬は人間のように何か考えに基づいて行動したり、意図的に行動をコントロールすることはほとんどできない。

したがって・・・。

●叱られても反省しない。
「うちのワンちゃんは叱るとシュンとなって反省のポーズをします」という飼い主がいるが、叱られておとなしくなるのは、飼い主が怖くて萎縮しているだけ。後悔しているわけでも反省しているわけでもない。

叱られると目をそらしたりするのは、犬の目をじっと見て強い調子でしゃべる飼い主にケンカや闘いの前ぶれを感じ、目をそらすことで「自分は闘いモードではない」という意志を示している。

●ましてや、嫌がらせなどできない。
犬は、人がいやがることかどうかの判断もできないし、「これで人を困らせてやれ」と意図することもあり得ないので、叱られた腹いせでわざと飼い主がしてほしくないところに、おしっこやうんちをするようなことはない。

●犬は主人思いの動物というわけでもない。
「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」などと言われるのも、人間の勝手な思い込みであり幻想。

飼い主が本能的欲求を満たしてくれる(十分な食事、安心な寝床、スキンシップなど)ことで、なつきはするが、よそでもっとたくさんごはんをくれる人を見つければ、そっちへ行ってしまう。

経験上、犬はうんちで嫌がらせをすることもあるし、ある程度反省もするし、忠誠心もあると思えるんですけどねぇ。

餌をくれるかどうかに関係なく、明らかに家族の中の特定のひとりに対して、犬が特別な関心や愛着を示すこともありますしねぇ。

鹿野正顕氏の話もなるほどと思いますが、稲垣栄洋氏の本などを読むと、やはり人間と犬は特別な関係で、犬はDNAのレベルで、人間との関係を他の動物より取得している気もします。

親愛の情や絆を感じさせる行為はあるが・・・

●飼い主に対して安心と幸せを感じる関係にあれば、親愛の情や絆を感じさせる行為が見られるのは確かだし、「飼い主に危険が及ぶのを察知して知らせてくれた」とか、「か弱い子どもを懸命に守ろうとした」といった感動的なエピソードもよく聞く。しかし、犬は犬社会でも、仲間に危険を警告したり、犬同士で助け合うのが普通で、それを飼い主に対しても行っているだけなので、それほど感動するようなことではない。

忠犬ハチ公の真実

犬は人間が好きですが、”欲求の期待に応えてくれる存在”が好きなのです。

ちなみに、有名な「忠犬ハチ公」の話がありますが、ハチは飼い主だった大学の先生を、亡くなった後もずっと駅で待ち続けていたわけではなく、好物の焼き鳥をくれる人を待っていたのが真実だそうです(諸説あり)。ハチの剝製は東京の国立科学博物館に現存していますが、解剖した際にハチの胃袋からは焼き鳥の串がいくつも出てきたそうです。

https://president.jp/articles/-/63374

ご主人さま、こんな話に惑わされないで、わたしたち犬の忠誠心を信じてください。

ここから心理学の話に入ります。

人間同志の関係にもあてはまる

犬のしぐさから犬の気持ちを想像して、それが犬の本当の気持ちに違いないように思い込んでしまうということは、人間に対してだって同じように起こる。

たとえば、恋人がうっとりとした表情で自分の顔を見ているので、恋人に深く愛されていると感じて嬉しくなったとする。実際にはその恋人は、昔のパートナーを思い出して「ああ、今、目の前にいるのがあの人だったらなぁ・・・」と白昼夢にただよってぼんやりしているのかもしれない。

わたしたちは、自分の感情や思いを相手に「映し出して」、それを相手から発せられたメッセージだと確信する。これを「投影」というが、表情やしぐさや発話内容など、相手側の持っているなんらかの要素が刺激になって投影が起きるものの、自分が勝手に創り出している部分も大きい。

対ヒトの場合は、自分の思い込みが幻想であったことに気づかされて失望することも多いが──とはいえ、そのときわたしたちは、「相手に裏切られた」とか「相手が変わってしまった」と思いがちである。その方が、自分の思い込みが幻想であったと認めるよりも都合がいいので。──、動物はわたしたちの投影する勝手な幻想を壊すことはないので、飼い主と飼い犬は、死がふたりを分つまで永遠に相思相愛の関係でいられる。

【おまけ】Kちゃんお勧めの擬人犬漫画

犬の擬人化といえば、Youtubeの静止画漫画の「世界の終わりに柴犬と」がおもしろい。
どういうわけか柴犬と会話できて、ものすごく理屈っぽい柴犬なんだけど、あくまで飼い犬という設定。
まあ、うそ言わない。おもしろいから一度見てみて。

 

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