(”Midlife Spirituality and Jungian Archetypes”からの抜粋 です。)
典型的な外向型の性格で、人付き合いが大好きなアンはいつも多くの人に囲まれていました。思いやりがあって人に好かれ、ユーモアのセンスも抜群です。アンが、暗くなって落ち込んだり、深刻に考え込むのを誰も見たことがなかったし、アン自身もとくにそんな経験がありませんでした。いつも前向きに明るく生きてきたのです。
そのアンに、50歳を過ぎた頃、変化が生じました。生まれて初めて、アンは、誰にも会いたくない、ひとりでいたいと強く思ったのです。
それまでにも、自分について考えたり、自分を見つめるための機会がなかったわけではありません。でもアンは、その“必要”を感じませんでした。いつも忙しくて楽しくて、やりたいことがたくさんありました。
アンは、それまでの過去25年間、あるスピリチュアル系のグループにも所属していて、その中心メンバーでもありました。
その年の夏、そのグループのメインイベントである2週間のサマーキャンプに参加しないと彼女が宣言したとき、友人はもとより、アン自身が驚きました。
友人たちは、必死でアンにキャンプに来るように説得しようとしましたが、アンの決意は固かったのです。その理由がなぜかもわからなかったのにもかかわらず。
自分が中心になって活躍できるサマーキャンプに行かないかわりに、彼女は、ひとりきりで人里離れたアパラチアの小屋に二週間滞在しました。
生まれて初めてひとりきりになり、自分がなぜこうしているのか考えました。
昼も夜も続く静寂は、ときにとてつもない恐怖感や、たまらない憂うつ感を呼び起こしましたが、それでも彼女は、ひとりきりでいることが自分に必要だと感じました。
社交的だっただけでなく、身体を動かすことも大好きで、今までいろんなスポーツをこなしてきたアンなのに、ひとりで過ごしたこの期間、自分の身体や、自分の動きのひとつひとつが、ある意味、新鮮に感じられたといいます。
それは、はじめて、“自分自身”につながれた感覚でした。自分が知らなかった、自分の別の側面を発見するという新しい冒険が始まったのです。
※冒頭の写真は、ウィキペディアより、山に囲まれたアパラチアの牧草地帯。