ユングは、ミッドライフ(中年)において人は、大切な人生の転換期を経験すると考えました。とくに32歳から38歳(*)の間に、個人の中にある深刻な変容が必ず起こるとし、これを「生の転換期(独語:レーベンスヴェンデ)」だと言っています。
* 現代社会ではこの年齢は40歳前後にあたるとか、この変化の時は“40歳から70歳にかけてのある時点”で訪れると言われることもあります。
子供から大人になる思春期に危機が訪れるのと同じように、人生の後半に到達するときにも危機が訪れます。人生の前半に無視してきた問題や義務や欲求が、この時期になって現れてくるのです。
たとえば今まで価値があったものに対して価値を見いだせなくなったり、今までの生き方に関心を失い始める、といった形でこの危機はやってくるかもしれません。あるいは、突然、原因不明の身体的症状に悩まされるかもしれません。いずれにしろ、この時期に問題や症状が生じたら、それは新しい自己実現のための病だと考えられるのです。これに直面しないでいる限り、その問題なり症状なりに、悩まされ続けることになりますが、勇気を持って立ち向かい、これを乗り越えると、それは新しい可能性や創造性への飛躍につながります。したがって、「中年の危機」は意義深い停滞と言えますし、またこの危機はきわめて「正常」なものであるとさえ言えます。