(最終更新日2023.1.7. 3,900文字)
手塚治虫「ブラック・ジャック」のテレビアニメ(2004~2006年放送分)を見始めたら止まらなくなって、30分番組を一晩で10話も観てしまった。アニメより原作漫画を読んだ方がよさそうだが、手軽に楽しめるアニメも入り口としてはお勧め。手塚治虫についても少し調べたが、天才の生態が垣間見えて面白かった。ブラック・ジャックは彼の分身だそうだ。
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ブラック・ジャックは医師免許をもたないもぐりの医師
天才外科医のブラック・ジャックは、医師免許を持っていない。これを聞いただけで、ブラック・ジャックのファンになった。
本当にできる人は、お墨付きなど不要である。コロナ騒動では、その逆に、立派な肩書きや権威に、だまされ・・・と言いたくなるほどさんざん振り回され続けて、これからはどんな権威のお墨付きも鵜呑みにしないことにした。
手塚治虫自身は医師免許を持っていながら、医師の資格を揶揄したような漫画を描いていたというのも小気味よい。
ブラックジャックは自分の実力を安売りしない
ブラックジャックは、赤ひげ先生のように清貧の人を救う医師ではない。
ふだん威張り散らしている政治家が怪我してすがりついてきたとき、「1,000万円払うなら、治療してやってもいい」と言うのだが、それとまったく同じセリフを、その政治家の横で重症の傷を負っている赤ちゃんのお母さんにも投げ、自分は慈善家ではないのでお金が払えないなら診ないと平然と言い放つのだ。
コンサルタントが内科医なら、我々投資銀行家の仕事は外科医にたとえることができます。実力のある投資銀行家は、ビッグ・ディールを仕上げた時に法外な成功報酬を得ますので、ブラック・ジャックのイメージに近いとも言えます。
ふーむ、そんな世界が現実にあるとは・・・。
ちなみにブラックジャックの要求する手術費は、3,000万円や5,000万円のときもあったが、依頼者たちは、一瞬、途方もない高額にたじろぎつつも、全員がもれなく、値切り交渉をすることもなく「お願いします」と言う。家族や、自分が怪我をさせてしまった人を助けてもらえるなら、自分が一生かけてやっと返せる大借金を背負ってもありがたいというわけだ。
「ブラック・ジャック」、テレビ放映における忖度
ブラック・ジャックが天才外科医として活躍する状況が必要なので、「ブラック・ジャック」には、毎回、災害や事故や事件が頻出する。ウィキペディアによると、テレビアニメの放送予定の内容が実際に起こった災害や事件と重なった場合、それが全体の話の流れでどんなに重要であっても、放送を自粛したり延期したりしたそうだ。話はオムニバス形式で各回ごとに完結しているものの、全体的な前後関係はあるので、順番に観ないと面白くないのだが、そんなことは二の次にしないとお茶の間から苦情がくるのだろう。
●2004年10月25日放送予定だった話:地震のシーンがあったが、放送2日前の23日に新潟県中越地震が発生したので放送延期。
●2005年5月30日放送予定だった話:「電車の振動で手術ができないというシーン」が放送前の4月25日に発生したJR福知山線脱線事故を連想させるとして放送延期。
また以下のように、テレビアニメで、あえて原作と変えている描写も、今の言葉でいう「忖度」といえるのかもしれないが、手塚治虫がもし生きていたら、了承しなかったのではないかと思わされる。
●原作では「密猟者が銃を乱射したため、船で怪我人が出た」。
↓
テレビアニメでは「ケージから脱走した猫が暴れて揺れたため、船で怪我人が出た」に変更。
●男の子が学校に行きたくないのに、母親に無理に行かされ、通学途中で交通事故に遭ったのは、原作では「自ら車に飛び込むことによる自殺未遂」による。
↓
テレビアニメでは、「目眩によって虚ろな状態の所を車に轢かれた」、つまり不慮の事故によると変更。
その他、わたしが観た10話までの中だけでも、原作では死んだ犬が、アニメでは死んでいなかったり、息子夫婦が老母を邪険にする話では、最後に「息子夫妻が、今までの振る舞いを反省する」という、原作にはなかった道徳的な美談が付け加えられていたりすると知って、白けてしまった。
「そこは変えちゃダメだろ!」というところが結構変わっています。
やっぱり、ぜひ原作漫画を読んでもらいたいですね。
Aさんに「ブラック・ジャック」を教えてもらったときにはどんな話かも知らず、かなり時間が経ってしまったが、ちょうど連載50周年記念で手塚プロダクションの公式サイトからTVアニメ版が期間限定で配信されていたので喜んで観たが、アニメでは、漫画のオリジナルの魅力は半減されてしまっているようだ。
というわけで、わたしは11話以降のアニメを観る気は失せてしまいました。
今なら「ブラック・ジャック」のアニメが無料で観れる
ブラック・ジャックは、昔テレビアニメにハマっていました。ピノコがかわいいです。
アニメのピノコの声が生理的に耐え難く、かわいいと思えませんでした。世界に誇れる日本のアニメですが、昭和のアニメの女の子の声や話し方はNGだと思います。
手塚治虫公式サイト
【全話公開予定!】連載50周年記念!『ブラック・ジャック TV版』をYouTubeで期間限定配信
ブラック・ジャックの髪の色は太極図
太極図のブログを書いた(2022/12/28)ところだが、ブラック・ジャックの髪の毛も白黒のコントラストになっていて太極図を連想させる。
この色のゆえんについて調べてみたら、最初、連載にするつもりもなかった短編読み切り漫画の主人公の頭を描くとき、なんとなく陰影をつけただけらしい。
連載の人気漫画になったときにそのまま定着し、後付けで、幼少のころの事故のせいで髪の半分がメラニン色素が合成されなくなって白髪になったとか、母を失ったショックで半分白髪に・・・などという説もあり。
わたしの頭も太極図です!
先日、頭の分け目を変えてオンラインで仕事をしていたら、クライエントさんから「とーなんさん、白髪染めをやめたんですか?」と聞かれた。わたしは、グレイヘアが流行る前から白髪染めをしない主義で、「シラ友募集中」と題したブログも書いたことがある(2016/5/25)ぐらいなのだが、オンラインで正面からだけ見ると、分け方によってごっそりと白が現れる。癖毛でうねっているし、太極図みたいだと思っていたが、これからもうしばらく──全部白髪になるまでは、「ブラック・ジャック頭」と自称することにした。
オバケのKちゃん情報
ブラック・ジャックについて語ります。
(オバケのKちゃん談)
手塚治虫は、次々に現れる新人漫画家たち(石森章太郎、藤子不二雄、さいとうたかお、なんかだと思う)に押されて、もう手塚はだめだ、時代遅れだと言われた時期があったそうな。
そこで飛び出したのが大ヒット作品「ブラック・ジャック」。
最近、「ブラックジャック創作秘話」という漫画があるのを知って全5巻を読んだ。
これがものすごくおもしろい。
renta というサイトでレンタルすれば、有料だけど買うより安く読める。
ついでにこのYoutubeもおもしろかった。
【手塚治虫伝説】「すごいよ!これこそ本当に都市伝説だよ!」ブラックジャック創作秘話からアニメへの拘り、漫画界の神様の話 (岡田斗司夫)
オバケのKちゃんが教えてくれた19分動画の、最初の7分が面白かったです。
手塚治虫とかけて富士山と解く。
そのこころは、遠くから見ると威厳があって美しい、でも近くに行くと険しい山道だらけで、ゴミも落ちている。だから周りのスタッフは大変。──天才とつきあうというのはそういうことらしい。
そして天才にも苦労はある。
何をかいてもつまらなく、人気も出ず、ちょうど虫プロの倒産もからんで、お手上げの状態だったのです。
手塚治虫「ブラック・ジャック創作秘話」より
ブラック・ジャックをかきはじめるまで、ぼくにとっては長い長い冬の時代でした。
公式サイトよりハードボイルドな外科医であるブラック・ジャックは、自らも医師である手塚治虫のある意味では分身とも言えるでしょう。ブラック・ジャックが問いかけ続ける「生命とは何か」あるいは「人としての幸福はどこにあるのか」という疑問こそが、手塚マンガのテーマでありました。
おまけ:現実の外科医たちにインタビュー
天才外科医といえば、日本でも有名なスウェーデンのスーパー外科医、宮川絢子さん。最近、どうされてますか?
今月(2022年12月)は、とても難しいオペが多くて、昨日も朝から夜9時までぶっ通しでオペしてました。わたしは天才ではありませんが、この専門分野ではスウェーデンで最も経験ある外科医の一人として、世界に出ても恥ずかしくないという自負はあります。
カッコいいですね!
僕は標準外科医です。
「ブラック・ジャック」は、子供の頃に読んで、当然憧れましたが、実際に外科医になって気づいた事は、外科医が職人だということです。
ブラック・ジャックの手術の手技も一代限りで消えてゆきますし、その点、楽器の練習と同じです。
僕は、たとえて言えばビッグバンドの奏者なので、助手や直接介助の看護師(この人の技量が律速段階に影響します。)との連携を重視して、テンポ良く手術をこなすように心がけています。
どんな仕事にしろ、遊びでも趣味でも、天才も凡人もみんな職人の面を持っていますし、誰もがブラック・ジャックの要素を持っているとも言えますね。