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映画「手紙」(2006)に描かれた犯罪者家族の苦しみ、差別やきょうだいについて/宮崎勤と林真須美の家族

(全2ページ2,900文字)
クライエントさんと「きょうだい」について話していた中で教えてもらった映画「手紙」(東野圭吾原作、2006)を観た。鑑賞後、しばらく何もできなくなるぐらい余韻が後をひき、いろんなことを考えさせられた。
ふと、わたし(とそれ以上)の世代にはあまりに有名な宮崎勤と林真須美の事件とその家族のことも思い出したので、調べたことを次のページでまとめた。

映画「手紙」のあらすじ

弟と2人暮らしの兄が、弟(主人公)の大学進学のための金欲しさに空き巣に入り、思いがけず殺人を犯してしまい強盗殺人の罪で刑務所へ。毎月、弟に手紙を書く。自分のために罪を犯した兄を想う弟も、しばらく平静を装って手紙を書いていたが、実際には獄中の兄の平穏な日々とは裏腹に、「強盗殺人犯の弟」というレッテルを貼られ差別を受け続けていた。そのレッテルにより、弟は進学、就職、恋愛、結婚・・・すべての幸せが近づいては遠ざかってしまう。ひとりで苦しみながら弟は、兄に面会に行くこともしなくなり、手紙を書くのもやめた。

差別にどう立ち向かうか

弟は、強盗殺人犯の家族という事実を隠して生きていこうとした。そして、それが明るみになって差別されるようになる度に転職と引っ越しを繰り返す。兄の他に家族のいない弟にとって、この秘密を知られながらもつきあいが続いたのは、中学時代からの親友と、職場で知り合った女の子の二人だけだった。女の子の方は、弟に恋してどんなに冷たくされてもつきまとい、弟を支え続けた。

東野圭吾はこの話の中で「差別されるのは不当ではなく当然」なのだから逃げずに生きていくしかないと登場人物に語らせる。弟に恋した女の子もその立場から弟を励まし、ふたりは結婚して家庭を持つ。周囲からの差別をふたりで耐える生活は、それを十分覚悟していた妻にとっても想像以上に過酷だった。

きょうだいの縁を切るという選択

弟の妻は、自分自身も差別の対象となるような不幸な過去を持つため獄中の兄に対しても思い入れがあり、手紙を書かなくなった弟になりすまして兄にパソコンで手紙を書いて兄弟関係をつなぎ続ける。しかし妻に感謝しつつも弟は、自分たちの幼い娘も差別を受けるようになったことから意を決し、獄中の兄に数年ぶりに手紙を書いて本当のことを告げる。手紙の最後は「妻と子供を守るため、きょうだいの縁を切りたい。」という宣言だった。(そのあとで、芸人として刑務所を訪問し、兄弟が間接的に再会するラストシーンは、涙なくしては観れない。)

2時間があっと言う間のこの映画、今ならYoutubeで視聴できます。「Movie Tegami ChineseSubbed」で検索してみてください。

オフコース「言葉にできない」

映画の中で、青春時代のなつかしい名曲が流れてきた。

「きょうだい」「手紙」のキーワードで思い浮かぶ個人的なエピソードがあります。父と父の兄の関係があまりよくなかったのですが、大学生のとき、伯父からわたしの下宿先に分厚い封筒で手紙が届いたのです。内容は覚えていませんが、温かい伯父の気持ちが伝わってきて涙したことは覚えています。その叔父といつかゆっくり話したいと思いつつその機会を逸し、数日前が伯父の一周忌でした。

 

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