(1,400文字) 三島由紀夫の「豊饒の海」は全四巻の長編小説であるが、一巻ごとに独立した話になっていて、第一巻「春の雪」は、多くの監督によって舞台化されているほか、ドラマ化、映画化、漫画化もされている。つまり、4冊も読めないとひるまなくてもよい。
漫画化したのは、ベルばら(「ベルサイユのばら」)でおなじみの、あの池田理代子センセイです。
同世代の人しか知らないかも。
この小説に惹かれた人たちが、それぞれの思い入れにより独自の切り口でさまざまに作品化していると思うと興味は湧くものの、「春の雪」を読んだ直後の今は、これがどんな風に作品化されているのか見てみたいとは思えない。(作品リストは最後に掲載。)
なんといっても美しい日本語に感銘を受けたので、当分この余韻に浸っていたいし、頭に浮かんできた情景だけで十分なので、むしろビジュアル化してもらいたくないのがその理由。それに「禁断の恋」という大筋のテーマよりも、男同士の友情や、脇役の人物像や、個々の心理描写など細かい部分の方が印象的で、ストーリー自体には感動しなかったので、この小説は小説として読むのに限ると思ってしまう。
そんなわたしが共感したアマゾンレビューです。
全部文学で埋めてら〜!
美しい日本語も然り、反復するようなリズムのある文法をなぞること、いとおかしw
何がやばいって、そりゃ読んだ後でい!
内容思い出そうとすると、文字の代わりに綺麗な映像や静止画が巡るんでい!
あっ!耽美!パチパチ👏
たまげました、一本取られたプチプチ🥸
読んでよかった👌
現在、発売されているバージョン(現代仮名遣い)よりも、古本でしか買えないハードカバー(旧仮名遣い)の方が、読みにくくても、さらに三島由紀夫の美しい日本語の世界を満喫できる。
「春の海」レビュー記事
「春の雪」をすでに読んだ人にお勧めのイチ押しレビューは、辛酸なめ子。
この人の文章は、いつも的確な描写で、かつユーモアのセンスが抜群です。
もっと真面目なのが読みたい人にはこれ。
↓
●【100行で名著】三島文学の幻想的で知的な世界観 『豊饒の海(一)春の雪』三島由紀夫 東大新聞オンライン 2022 /3/23
三島由紀夫───彼は戦後日本を代表する作家であり、イデオローグであった。三島というと、市ヶ谷駐屯地における割腹事件や右翼的な言動にばかり注目が集まるが、それは極めて卑小な見方に過ぎない。そこで今回は、2020年に没後50年を迎え、近年その著作が再び評価されている三島由紀夫、特に三島文学の金字塔である遺作『豊饒(ほうじょう)の海』四部作について、4回に分けて語りたい。三島文学の幻想的で知的、技巧的な世界観を少しでもお伝えできれば幸いである。
東大新聞オンライン
「春の雪」をまだ読んでいない人、読んだけど忘れたという人には、たとえばこのあらすじ紹介記事など。
↓
●ダ・ヴィンチウェブ:三島由紀夫『春の雪 豊饒の海(一)』あらすじ紹介。皇族の婚約者を妊娠させてしまう、幼馴染の禁断の恋
(更新日:2023/7/12)
読書会(東京)情報
「豊饒の海」、いつか読みたいです。読書会界隈ではよく話題になっている本で、最近もこんな企画案内がありましたよ。
2024/4/13(土) 15:30〜
三島由紀夫「豊饒の海」を1年かけて読む会(1)
ナビゲーター: 柳沼雄太(書肆 海と夕焼 店主)
会場:双子のライオン堂
https://peatix.com/event/3881120/view
このページの公開が遅れて、ちょうど初回が終わったところですが、2回目からの参加もできます。
付録:作品化された「春の海」リスト
舞台化
●東宝 現代劇特別公演 1969年:脚色 菊田一夫、出演 市川染五郎、佐久間良子
●松竹 1973年:脚色 川口松太郎、出演 佐久間良子、市川海老蔵
●京都南座 1979年:脚色 川口松太郎、出演 市川海老蔵、酒井和歌子
●ミュージカル『春の雪』2012年:出演:宝塚月組
●2013年:演出 石井ふく子、出演 若尾文子、三田村邦彦
●2018 PARCO PRODUCE“三島×MISHIMA”
テレビドラマ化
●おんなの劇場『春の雪』(フジテレビ)1970年
出演:吉永小百合、市川海老蔵(のち12代 市川團十郎)、乙羽信子、山形勲、観世栄夫、高橋長英、露口茂
映画化
●『春の雪』 2005年
監督:行定勲
脚本:伊藤ちひろ、佐藤信介
企画:藤井浩明・三島威一郎(三島由紀夫の息子)
主演:妻夫木聡(松枝清顕)、竹内結子(綾倉聡子)、高岡蒼甫(本多繁邦)、若尾文子(月修寺門跡)、ほか
漫画化
●『春の雪』(主婦と生活社、2006年2月/中公文庫コミック版、2008年3月)
脚本・構成:池田理代子、画:宮本えりか