最終更新日2023年1月22日、本文2,000文字に付録が3ページがついて全部で10,000文字超。
世の中には、たとえば「ロ長調」と調の名前を聞くと音楽の雰囲気が想像できる人も多いようだ。そんなことはできないばかりか考えたこともなかったが、今回、調について教えていただいてにわか勉強してみたら、心理学との具体的なつながりが見えてきてとても参考になった。
ユング心理学は、イメージの心理学とも言われるが、調の世界はまさしくイメージの世界だった。
調のエキスパートと、調はノーマークだったクラシック音楽ファンの協力をいただき、大作コラムが完成!
公私にわたって、周りには音楽家や音楽に造詣が深い人たちが大勢いますが、その人たちの世界の一部を垣間見て、自分の世界も広がった気がしています。
巷に流布している血液型、星座、干支などによる分類のほか、心理学でも古今東西いろんな性格分類法が用いられてきた。ユングのタイプ論もそのひとつだし、どの分類法もそれぞれに納得できるものだが、最近、教えてもらって興味深かったのは、調(Music Key Signatures)による分類法。
それぞれの人に固有のオーラとか「色」が見えるという人はいるが、この方は、人と接していると、イ長調とかト長調など、クラシック音楽のタイトルでよく見かける「調」が思い浮かんでくるという。
音楽を趣味にしていてその識別感覚を共有できる知人もいて、「職場のXさんってホ長調ですよね。」「ええ、ホ長調に違いありません。」などという日常会話が成立するそうだ。
子供の頃、結構長くピアノを習ったのに、調なんて教えてもらったことも考えたこともなく、桑田佳祐が歌っていた「C調言葉に御用心」のC調しか思い浮かびません。
「C調(=ハ長調)」は言動が調子よく軽々しいさまを表し、1960年代からジャズマンを中心とするミュージシャンの楽屋言葉として使われた。また、植木等が使用したことで、ミュージシャン以外の一般にも普及。更に1979年にはサザンオールスターズがシングルタイトル『C調言葉に御用心』に使用したことで広く浸透したが、1990年代には使用する人も減り、死語となっている。
参考:コトバンク、日本語俗語辞書
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本文:調で性格分類、そもそも調ってなに?
C調以外をご存知ない方、わたしといっしょにまず調について勉強しましょう!
下の図のいちばん上、時計で言えば文字盤の12時にあるのがCで、スタート地点。シャープもフラットも何もつかず、ピアノでは白い鍵盤だけで弾けるのがC調。
Cから右回りにシャープ♯がひとつづつ増えて調が変わり、いちばん下の6時のところではシャープが6個になる。
Cから左回りはフラット♭がひとつづつ増えて調が変わり、6時のところではフラットの数が6個になる。
参考サイトによると、12時〜6時までの右半分は♯(シャープ)の世界、6時〜12時までの左半分は♭(フラット)の世界。
長調は英語でメジャー、短調はマイナーということぐらいはわかっても、C調イコール「ハ長調」とすぐに結びつかないわたしのような人のために付け加えると、「ドラミファソラシド」(イタリア語)は、英語の「CDEFGABC」(ドイツ語では「CDEFGAHC」)に相当し、日本語では「ハニホヘトイロハ」なので、ドレミのドは、Cとハに相当する。したがって上の図のアルファベットを日本語にすると下の図のようになる。
12時部分のハ長調(C)にシャープやフラットの調号が何もなかったのに対し、下の6時に位置する変ト長調(G♭)・嬰ヘ長調(F♯)は、いちばん調号が多くて、ピアノでいえば黒鍵だらけになる。黒い鍵盤だけを使って弾ける「猫踏んじゃった」の調がこれ。
「猫踏んじゃった」はピアノを触ったことのある人なら誰でも知っていて、楽譜を見なくても弾けるおなじみの曲ですね。
12分割された中のそれぞれのアルファベットやイロハの文字が表すのが「主音」で、明るい響きか暗い響きかによって長調と短調に分けられるので、「調」は全部で24種類になる。
※ピアノの黒い鍵盤は1オクターブに5つしかないが、ドレミファソラシ(ハニホヘトイロ)の7音にそれぞれ半音上がる・下がる音があるので、シャープやフラットは7つつく場合もある。
※7 x 2 = 14、それぞれに長調・短調があるので14 x 2 = 28、これに調合のないハ長調(C)とイ短調(Am)が入って全部で30種類、この中に、名前は異なっても同じ音の調があるため、種類は24種類。
※6時部分の変ト長調(G♭)と嬰ヘ長調(F♯)の違いについては、変ホ長調先生の後記参照。
深みにはまってきて、頭が混乱してきた・・・。しろうとが、うかつに手を出すべきではなかったかも。
ユングのタイプ論では主機能4種(感情・思考・直感・感覚)x 副機能2種の組み合わせで8種類にそれぞれ外向型と内向型があって全部で16種類になりますが、一見、外向型は長調、内向型は短調に相当するイメージとも言えますね。
24種類の調にはそれぞれ違ったイメージがあり、たとえば、わたしにこの分類法を教えてくれた方の自己イメージである「変ホ長調」は、調を擬人化して特徴をまとめている人によると「落ち着いた、やわらかな、包容力のある」特徴があるそうで、なかなかぴったりくる。
※他にも、こちらのページでは、英文記事”Musical Key Characteristics and Emotions”を参考にして、各調の持つ雰囲気が性格と結びつけて述べられている。
私は、人の性格を24種類ではなく長調12種類に分けます。なぜかと言うと、どの長調にも平行調という調号の同じ短調と、同主調という主音が同じ単調が連結していて、連結した長調と短調はひとつの音楽の中で移り変わるのですが、それが、ちょうど人が、明るい時もあれば暗い時もあるのと似ているからです。
(※詳しくは、変ホ長調先生のレクチャーページ参照。)
調べたところ、モーツァルトのホルン協奏曲の多くが変ホ長調だそうです。変ホ長調は英雄的な響きの調としてもよく使われて、たとえばベートーヴェンの交響曲 第3番「英雄」が変ホ長調とのことです。
モーツァルトの「ホルン協奏曲第3番」は英語で、Mozart Horn Concerto No 3 E flat major。Eフラットメジャー(変ホ長調)という、今まで馴染みのなかった言葉が、急に身近に感じられてきました。
24種の調はまったく別々の存在というわけではなく、さまざまな関連をもって音楽の中で使われていきます。なかでも、互いに関係の深い調を近親調といいます。近親調以外の調を遠隔調といいます。
wikibooksより
まるで人間社会の話のようにも聞こえてきます。自分と似ていてわかりやすく、合わせやすい人もいれば、自分と違いすぎてやりにくい人もいるけれど、いろいろなタイプの人(調)が、互いに関連しながらひとつの社会(音楽)をつくっているのですよね。
自分と「調」が違う人には、「転調」して合わせることができますよ。マスクメロンの網目模様が全部つながっているように、少しづつ転調すれば、どんな調ともつながれます。
なるほど!
それに、人は、長い人生の中で、ずっと同じ響きではないですよね。 「なんかあの人変わったよね」ということもありますし、人の基本の調も、転調しうると思います。
つまり、変ホ長調さんの”調分類”は、血液型のようにずっと変わらないものではないというところはとても興味深い。
ユングのタイプ論では、個人の特性には、基本的な優勢な機能はあるが、劣等機能も進化させていくことが必要(たとえば思考優位の人なら、好きか嫌いかなど感情で捉えることも大切。)と言われ、人は個性化が進めば進むほど、元のタイプがわかりにくくなると言われている。
ここまでまとめて、調で人を分類するというイメージがなんとなくわかってきましたし、最初に理解できなかった変ホ長調さんの日常会話も想像つくようになりました。
わたしが担当するこの本文ページの最後に、調の違いを聞いてみていただきたい。
以下、ピアノで調をぐるっと一回りしてくれている4分動画。
途中で最初に戻ってみてかろうじてハ長調との違いがわかる程度かな。
絶対音感が全くないから、音階の弾き始めはどれも「ド」のように聞こえてしまいます。
ボクの大好きなバッハの「無伴奏チェロ組曲1番 」と「亡き王女のためのパヴァーヌ」はト長調(G- Major)、ショパンの「ノクターン20番」は、C-Sharp Minor(嬰ハ短調)。クラシックでは決まり事があって、花言葉みたいに調を決めて作曲されているけど、途中で転調もあってそこが聴きどころ!
曲中の転調は、ググッと気持ちがよくなるパワースポットですよね。
クラシックファンですが、調の違いは聞き分けられないです。