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調の世界にようこそ:調(key)で性格を分類する──音楽理論の心理学

後記:本コラムの執筆協力者の談話

本コラムを読んだ変ホ長調先生とオバケのKちゃんからいただいた付記です。

変ホ長調先生の深掘りコーナー:異名同音の調はなぜ雰囲気が違うのか

この機会に、日頃、面白いと思っていることについて、改めてじっくり考えてみました。

上の図で、いちばん下のグループに入っている嬰へ長調と変ト長調は、ファ#(嬰へ)=ソ♭(変ト)なので、鍵盤上は同じものを弾くことになります。

だけど、嬰へ長調と変ト長調は、鍵盤上はまったく同じ音を弾いているのですが、それぞれ「嬰へ長調らしさ」と「変ト長調らしさ」というのがあって、微妙に違うんですよね。

嬰へ長調と変ト長調とでは、それを囲む調(近親調)が違うからかなとも思いましたが、近親調も、結局は異名同音の調になっています。

嬰ヘ長調の属調は嬰ハ長調で変ト長調の属調は変ニ長調ですが、嬰ハ長調も変ニ長調も鍵盤上は同じ音なんですよね。

なので、嬰ヘ長調と変ト長調が違うのは、やっぱり、「イメージの違い」ということなんだと思います。雰囲気が違うのはイメージが違うから、というのは、トートロジーのようでもありますが・・・。

私の場合は、へ(ファ)とト(ソ)の世界観は全然違ってて、ヘ長調は穏やかで平和的な感じで、ト長調は輝いてて躍動的な感じがするので、嬰ヘ長調も変ト長調もそのイメージの延長に捉えてる気がします。シャープ系の調(明るくて積極的な感じ)と、フラット系の調(あたたかくて控えめな感じ)の世界観の違いとしても感じます。

そういう意味では、ショパンの舟歌やベートーヴェンのピアノソナタ第24番「テレーゼ」は嬰ヘ長調らしいと思うし、ショパンの練習曲op.10-5「黒鍵」や練習曲op.25-9「蝶々」は変ト長調らしいと思います。
もしも練習曲op.10-5「黒鍵」が嬰ヘ長調だとしたら違和感があるし、弾き方も変わると思います。

なので、もしも異名同音の調を調当てゲームするとしたら、音程は同じなので、音程以外の要素(拍子、音型、テンポ、弾き方など)でイメージを比較して判断すると思います。

例えば、2拍子は快活で、3拍子は優美など、拍子によってもイメージが違うので、調以外の要素からも、その曲の世界観に迫ることはできます。

音楽は目に見えないので、やたら理屈っぽくなってわかりにくいかもしれませんが、耳で何らかのイメージを見ていることは、確かです。

まぁ、本当に、不思議なものですね。
普段感じていた調のイメージを、改めて考えて言葉にする機会が頂けて、感謝します。

そして、やっぱり、音楽は楽しいなって思いました。
目を閉じて絵を語っても仕方ないので、とにかく、聴くことです(^^)/笑。

(変ホ長調さん、2023/01/20)

オバケのKちゃんのひとりごとその2

このコラムを読んで、またいろんなことが思い浮かんできました。

姉がピアノを習っていたのでピアノが家にあった。姉は、モーツァルトのK545を弾けるようになったらほかの曲には目もくれずそればかり弾いていたので(私はそれでこの曲に耳タコになった)、母に怒られていた。

私としてはそれだけ弾ければ充分じゃないかと、姉に同情したものだ。

後年、グレン・グールドの弾くK545を聴いて、あれ?どこかで聞いた曲だなと思い、そして姉が弾いていた曲だと気が付いたときは愕然とした。同じ曲の片りんもなかったから。

それで調性のことに話がやっと行くけど、ピアノで遊んでいるうちに、ある日どの鍵盤で開始しても、黒鍵と白鍵を適宜使えばドレミファソラシドを弾けることに気が付いて一所懸命その組み合わせを探した。しかし私の調性との付き合いはそれで終了した。残念ながら。詳しいシチュエーションは忘れたが、ある人がピアノの巨匠の部屋のとなりの部屋で休むことになった。巨匠はピアノの練習を始めた。(大谷君が野球の練習って言わないよね。トレーニングだよね。)それでその人は、さあ巨匠のすばらしい演奏をただで聞けるぞと耳を澄ました。ところがその巨匠は転調させながらのスケール(ドレミファソラシドを弾くこと)演奏を数時間行い、それでその日は終わったそうな。

岩城宏之という指揮者のエッセイによると、岩城宏之は現代音楽を得意としていて、新作もよく演奏した。現代音楽の作曲家は、記譜法を発明してそれを演奏することを求めるということがよくあるらしく、その日リハーサルしていた曲の譜面には、シャープ、フラットの記号が譜面の途中にあったら、それはそこの音符のみ有効と注意書きがされていたそうな。

ところが演奏家たちは、子供のころからの訓練で、そこだけ有効ということができなくなっているらしい。それでリハーサルしてみると演奏はめちゃくちゃになった。岩城宏之は現代音楽家たちの新記譜法を否定する気はまったくなかったそうだが、こればかりは不可能と判断して、普通の記譜法に書き直させてリハーサルを行った。

さて作曲家も立ち合いでのリハーサルの日、非常にスムーズな演奏がなされ、作曲家もご満悦だったそう。

ところが空気が読めないものはどこにでもいるもので、ある楽器奏者が作曲家に質問をしたそうな。それで、うんどれどれと楽譜を覗き込んだ作曲家は、みるみる顔を赤くして怒り出したそうな。岩城宏之にしてみれば、だってあんた演奏に満足してたじゃないの、本当にこれだけは無理だから勘弁してよということだったらしい。

そんなものかと思っていたら、今回のとーなんさんのコラムでよくわかった。音楽家は変調記号があると、たちまちその調の世界に入ってしまうわけなんだな。ふーん、訓練とはおそろしい。

(オバケのKちゃん、2023/01/20)

とーなんのコラム遊び後遺症

うっかり街でシャープやフラットを見かけると目が離せなくなり、これは何調だろうかと考えてしまうようになりました。

下は、ストックホルムの地下鉄の壁画。(2023/01/20撮影)

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