「いつも自殺という言葉のまわりを42年もうろうろしている」吉本ばななからの、人生はすばらしいので続けてみる価値があるというメッセージを、現実の恋愛エピソードと共に紹介。(970文字)
クライアントさんに教えてもらって読んだ本のあとがきからの抜粋です。
「哀しい予感」は、吉本ばなな(1964-)が「キッチン」(1987)で新人文学賞を取った翌年に出版された初の長編小説で、24歳のとき(1988)の作品である。当時の彼女は言う。
このまま健康さえ上手くいけば、けっこう沢山小説が書けそうです。もちろん、脳の方の健康も含めてなので、ちょっと危ない気もしますが、そのスリルが作家を走らせるのだ。
吉本ばなな「哀しい予感」あとがき(1988)より
そしてどうせなら、自分の中にあるものを全て送り出してあげたいと思います。そういう意味で、この小説は私の中の「ある方向性」の卵だと思います。
この単行本は3年後に改訂されて文庫版になっているのだが、その文庫版の解説を書いている担当編集者は、あとでその事実が公開される、吉本ばななの同棲相手なのだった。
解説は、文章がひどくかっこいい担当の石原正康さんです。ジャジャジャジャーン!
吉本ばなな「哀しい予感」角川文庫版あとがき(1991)より
心からの愛をこめて、この小説を石原さんに捧げます。
27歳、若々しい乙女モード全開の吉本ばななが42歳になったときに、また新しくあとがきを書いている。
石原正康さんと、この小説を書いた頃、共に暮らしていました。・・・さて、時は過ぎ、私は今も石原さんを深く愛しています。
よしもとばなな「哀しい予感」幻冬舎版文庫あとがき(2006)より
そして不思議なことに、石原さんの奥さんのこともかけ値なくとても深く大好きなのです。多分、そのうちやってくる二人の赤ちゃんのこともものすごく好きになるでしょう。
そして多分、彼も私の夫や子供に全く同じ気持ちを持っているでしょう。
人生はすばらしい。続けてみる価値があります。
いつも自殺という言葉のまわりを42年もうろうろしている私が言っているのですから、間違いありません。
2003年から2015年までペンネームをひらがなにして、また漢字に戻したそうです。
このページは、最後の二行を紹介したいと思って書き始めました。
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