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陸に住む人間が異邦人になって海のなかを行く(吉本ばなな「哀しい予感」解説より)

ユングの言う個性化のプロセスのヒントになりそうな表現を見つけたので紹介する。(760文字)

クライアントさんに教えてもらって読んだ本の解説からの抜粋です。

陸に住む人間にとって、海のなかを行くことは最高の異邦人になることだ、と僕に言ったのは、吉本ばななが憧れてやまない音楽家にして、本書のカバーの絵を描いた原マスミだった。

石原正康「哀しい予感」解説(1991)より

「哀しい予感」の編集者であり、吉本ばななの恋人でもあった石原は、吉本ばななの小説に出てくる登場人物たちは、「微熱を持った不幸」を背負いながらも訪れた不幸を受け入れて輝いている点で、「海を行く人々のようなうつくしさを持つ」と言う。

春にしても夏にしても海はうつくしく、魅力的だ。
けれど、海中を行くことはこの世で一番つらい。何が潜んでいるかわからないし、激しい潮流に出会うことも日常となる。そこでは会話ですら、無駄を許されない。本当に伝えたいことだけを心をこめて言うしかない。むき出しの魂のままに生きるしかないのだ。

石原正康「哀しい予感」解説(1991)より

原マスミがどういう意味で言ったのかは知らないが、「最高の異邦人になることが海のなかを行くこと」というのは、わからないながらも、なんとなくなるほどなと思える。

ユングの言う個性化の道を進むことも”最高の異邦人”になって、海のなかを行くことだと思えます。

「哀しい予感」の表紙絵

吉本ばななが、追っかけをするぐらいの熱狂的ファンだったシンガーソングライターの原マスミは「明るい孤独」を描くイラストレーターでもある。自ら直々に頼んで「哀しい予感」のカバーイラストを描いてもらったときは夢のように思ったそうで、原画は、吉本ばななの家のキッチンに飾られた。

※アイキャッチ画像の出典はこちら

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