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4.タロットカードで見るトリックスター
4-1.愚者カード

カード番号は「0」で、数を持たないカード。トランプのジョーカーの原型とも言われる。
22枚の大アルカナ(※だいアルカナ:タロットの一組78枚のうちの寓意画が描かれたカード)の中で唯一移動している人物が描かれている絵札という意味でも特別視されるカード。
移動している姿で描かれていることに関しては、
1.「1」から「21」までの各カードを順を追って渡り歩く何らかの目的を持った旅人と解釈する説。
2. 他の21枚の大アルカナや他のカードを意識すらせず全くの自由気ままに歩き回る完全に無計画な放浪者と解釈する説。
の二通りの説があり、この相反する説が両立する形でいろいろな解釈に用いられている。
カードの意味
●正位置:自由、型にはまらない、無邪気、純粋、天真爛漫、可能性、発想力、天才。
●逆位置:軽率、わがまま、落ちこぼれ、ネガティブ、イライラ、焦り、意気消沈、注意欠陥多動性。
続いて、代表的なタロットカード二種のそれぞれの絵柄を見てみよう。実にたくさんの象徴が含まれていてとても興味深い。
4-2.ウェイト版タロットの愚者
●ウェイト版タロットの絵に描かれている人物は若い旅人。(若さは未熟さを現す。)
●犬は旅人のパートナーで、前進を意味する。
●旅人は自分の目の前に崖が迫っていることにまだ気づいていない。
今まさに崖に向かって歩こうとしているが、この先、崖から落ちるか、踏みとどまるかは旅人次第である。
4-3.マルセイユ版タロットの愚者

(1701〜1715年ごろ)
マルセイユ版タロットに描かれている「愚者」の特徴と解釈は以下のとおり。
●ピエロのような派手な衣装:
– たとえば魔術師の衣装が奇抜であっても統一が取れているのに対し、統一性や計画性が感じられない。
●冠:
象徴的に王の持ち物であるという点で権力の象徴であり、黄金の冠は天上の神との交信を図るための霊的要素も備えた象徴とされる。このような象徴を身につけている「愚者」は、ある種の霊的な力や、過去においては権力を持つ階級にいたと考えられる。
●左手で、右肩に担いでいる先端に袋のようなものを取り付けた棒は、「男根」の象徴であり、繁殖と豊饒の象徴と考えられる。
●草の生い茂る荒野を歩いているが、抽象的な絵柄のため、見方によっては後ろ歩きをしているようにも見える。
”「愚者」の持つエネルギーが無意識的なものであり、一定の方向性を持たず自由気ままに放たれていることを表している。しかし、同時にそれ自体が目的であるとも解釈されており、このカードの二面性を示す要因として扱われている。”
●人物の後方からは犬が追従しており、その前足を人物の右足付近に寄せている。
”この人物は自分の衣服、さらには自分の持つ棒や荷物、果ては進んでいる方向やその目的、自分を取り巻く環境のいっさいについて特にこだわりや興味などは持ち合わせていないのである。故にこの人物は、後方の犬の存在すら認知しておらず、ズボンの右足は犬によるものか破かれたままとなっている。”
「愚者」は、道化などと同様に相対する二つの極を持っている。つまり、愚行を象徴するもの、計算高くしたたかな側面を象徴しているものである。これらのことから、この人物はいっさいの計画性を持ち合わせていないが全くの無計画という訳ではないとやや矛盾した結論が付けられる。
(※このタロットカードの項目は、ウィキペディアの内容をまとめたもの。)
