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新風を吹かす負の英雄、トリックスター:日本神話、ギリシア神話、タロットカード、ユング

お笑い芸人もトリックスターと言えますね。今回は触れられませんでしたが、次回のテーマにしたいと思います。

(最終更新日:2020年8月8日)全5ページ5200文字。

トリックスターは、正統派のヒーローや品行方正な優等生ではないが、アンチーヒーローともまた違う。世の中の常識や秩序を、気負いもなくひょうひょうと破りながら、停滞した世界に新風を巻き起こして物語を展開させる力を持つ、不思議な魅力にあふれた存在である。

日本神話のスサノオ、中国の孫悟空、ギリシア神話のプロメテウスとヘルメス(ローマ神話ではメリクリウス)など、トリックスターの例を紹介する。中でもタロットカードの「愚者」カードには、トリックスターの象徴(シンボル)が満載でとても興味深い。

ユングもとても重要視したトリックスターについては、書いても書いても書ききれないしわたしの力ではまとめきれないが、ユングの言葉もいくつか引用した。

1.トリックスターとは

トリックスター (trickster) とは、神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を展開する者である。往々にしていたずら好きとして描かれる。善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、異なる二面性を持つのが特徴である。

ウィキペディアより

元は、ラディンがインディアン民話の研究から命名した類型であるが、ユングが取り上げたことで、一般的に知られる用語になった。(ユングは、ラディンの「トリックスター:北米インディアンの神話研究 (Radin, 1956)」に「トリックスター像の心理学について」と題した注釈も書いている。)

トリックスターは「負の英雄」で、その”愚かさ”によって、他の者が一生懸命努力しても達成できなかったことを成し遂げてしまう。

以下、具体例を挙げてみるが、とくにタロットカードの「愚者」は、トリックスターをイメージするとてもわかりやすい象徴だと思う。

2.日本、中国のトリックスター

2-1.スサノオノミコト(日本神話の神)

イザナギノミコト・イザナミノミコトの子で、天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟。多くの乱暴を行ったため、天照大神が怒って天の岩屋にこもり、高天原から追放された。出雲に降り、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治し、奇稲田姫(くしなだひめ)を救い、大蛇の尾から得た天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を天照大神に献じた。(デジタル大辞泉より)

2-2.吉四六(きっちょむさん)

一休や彦一と並んでとんち話で知られる民話の主人公。こういうお調子者の類もトリックスターの一例。
ウィキペディアに、とんち話がたくさん紹介されている中から、短いものをひとつ紹介。

どじょう鍋

村の男達が囲炉裏端でどじょう鍋をしようとしていると、吉四六が入ってきて、豆腐を温めさせてくれないかという。男達は出汁になってちょうどいいとこれを許す。程よく煮えたところで、吉四六は豆腐を掬い上げて帰っていく。吉四六が帰った後、男達が鍋を見ると、中はもぬけの殻。鍋の熱さにどじょうたちが耐えかねて、吉四六の入れた豆腐の中にもぐりこんでしまったのである。まんまとどじょうを掻っ攫った吉四六だった。

2-3.孫悟空

中国の長編小説「西遊記」に登場する怪猿。石から生まれ、変化の術と觔斗雲(きんとうん)の術とを修得して天宮を騒がせ、如来によってとりおさえられる。のち、天竺(てんじく)に経文を取りにいく玄奘(げんじょう)三蔵(さんぞう)に助け出され、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごじょう)とともに道中の81難から玄奘を守り、目的を果たす。(デジタル大辞泉より)

『西遊記』では,生一本でおだてに乗りやすい底抜けに明るい性格に描かれ,縦横の活躍をし,元来主人公であるはずの三蔵法師の影を薄くしている。(ブリタニカ国際大百科事典より)

西遊原旨の挿絵より
(ウィキペディア)
 

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