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夢、およびその分析は、ユング派の分析において中核をなしている重要なものである。しかしながら「夢の重要性」などと聞くだけでも、非科学的という感じが先立ってしまって、馬鹿らしく思われるひとが多いかもしれない。その非現実的な夢を、大切な「現実」として、われわれは心理療法の場面に生かしてゆこうとするのであるが、確かに、これは少しでも誤れば奈落に落ち込んでしまいそうな、現実と非現実の境を歩む危険な仕事である。
河合隼雄著「ユング心理学入門」p.142
非科学的でうさんくさいと思われるのを恐れて、わたしはこれまで夢分析の面白さについてなかなか語ることができなかったが、これからユング派の夢分析についてもっと発信していきたいと思っている。
上掲の本で河合隼雄氏は、ニーチェが夢の意義の重要性を認めていたと思われるとして、ニーチェの言葉を紹介している。
人間は、夢の世界を作り出すことにかけてはだれでも完全な芸術家である。この夢の世界の美しい仮像は、あらゆる造形芸術の前提である。(中略)夢の世界において、どうでもよいもの、不必要なもの何一つない。
ニーチェは夢は神秘劇であると述べ、ショーペンハウワーは、「夢においては、だれもが自分自身のシェークスピアである」といったそうだが、まさしくそうだと思う。日々、クライエントの夢に接しながら、夢が絶妙な劇的構成を持っていることに驚嘆したり、断片的な夢のイメージが的確に大切なことを教えてくれることに感嘆している。
20年もこの経験を重ねているのに、いまだに自分の見た夢はつまらなく思えてしまうことが多いのが不思議でもあり残念です。無意識がどんなにメッセージを送ってくれても、わたしの意識がそれをキャッチできないのです。わたしの意識が分析家と対話することでようやく無意識の声を聞けるので、今も、クライアントとして夢分析を受け続けています。
※Image by ScandinavianStories from Pixabay