(1300文字) 周りに流されない、人の期待に応えない生き方を教えてくれる童話、「はなのすきなうし」。ふんわりマイペースを貫く主人公のフェルジナンドだけでなく、フェルジナンドを見守るおかあさんにも教えられる。話の内容を紹介したあと、日本語と英語の動画(それぞれ約7分)をつけた。
「はなのすきなうし」
「はなのすきなうし」(1936、原題 ”The Story of Ferdinand”)は、アメリカの児童文学作家、マンロー・リーフ (Munro Leaf)の代表作。
昔、スペインにフェルジナンドという仔牛がいました。他の仔牛達は、跳ねたり、駆け回ったり、頭を突き合って遊んでいましたが、フェルジナンドだけは、ポツンとひとり、草の上に座って、静かに花の匂いを嗅いでいるのが好きでした。
牧場の端っこのコルクの木の下がフェルジナンドのお気に入りの場所。フェルジナンドはこの木の下で、一日中、花の匂いを嗅いでいました。
フェルジナンドのお母さんは、そんな息子のことが心配でした。独りぼっちで寂しくないのか気掛かりだったのです。ある日、フェルジナンドのお母さんは、他の仔牛達と遊ばないのか尋ねました。すると、それよりも花の匂いを嗅いでいるほうが好きなのだとフェルジナンドは答えました。
フェルジナンドが寂しがっていないのを知ると、お母さんはそれで一安心。フェルジナンドの好きなようにさせてやることにしたのです。
そうして年が経つにつれ、フェルジナンドはどんどん大きくなり、しまいには大きくて強い牛になりました。もう仔牛ではありません。
他の仔牛達もすっかり大きくなって、マドリードの闘牛場で勇敢に闘うことを夢見ているのに、フェルジナンドだけは相変わらずコルクの木の下に座って、静かに花の匂いを嗅いでいました。
そんなある日、変な帽子を被った五人の男が牧場に来ました。五人の男が探しているのは、一番大きくて、一番足が速くて、一番乱暴な牛。闘牛に出すための牛を探しに来たのです。
牧場の牛達は、勇ましく唸ったり、角で突き合ったり、猛烈に暴れまわったり、闘牛に参加するため、一生懸命に自分達を売り込みます。
一方、フェルジナンドは、いつものようにコルクの木の下に座りに行きました。誰もが憧れるはずの闘牛に、一切興味がなかったのです。
ところが、フェルジナンドがコルクの木の下に座り込もうとしたまさにその時、猛烈な痛みに襲われます。なんと、クマバチの上に座り込んでしまい、針で刺されてしまったのです。
あまりの痛さに、フェルジナンドは唸り声を上げて飛び上がると、頭を振って地面を蹴散らしながら暴れてしまいます。それを見て喜んだのが五人の男。フェルジナンドはマドリードの大闘牛に連れて行かれることになってしまいました。
そして、大闘牛の日になるとマドリードは大騒ぎ。みんなフェルジナンドの勇姿を楽しみにしています。
でも、フェルジナンドは、「闘うのはいやなんだ」と、みんなの期待を見事に裏切って、闘牛場の真ん中でも座ったままだったので、故郷の牧場につれ戻されることになりました。
フェルジナンドは、今でもコルクの木の下に座って、大好きな花の匂いを嗅いでいるということです。
【参考】これがフェルジナンドの好きなコルクの木。瓶の栓でおなじみのコルクは、このコルクガシの樹皮を加工したもので、スペインはポルトガルに続いて、世界で二番目のコルクの主要生産地。
「◯◯できるけど、やらない。」ということは、◯◯に一般的な価値があったり、周りに期待されているとき、とても難しいことなので、多くの人が、本当は自分がそれをやりたいかどうかわからないまま、やってしまいますよね。
「はなのすきなうし」日本語動画7分
Ferdinand the Bull 英語動画8分
英語のディズニー版。Ferdinand the Bull – full short film。