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何をやっても結局批判される:ロバを売りに行く親子(イソップ物語)

周りの人は無責任に好き勝手なことを言うものなのでそれに振り回されてはいけない、と頭ではわかっていても批判されるといい気持ちはしないし、批判の意は含まずともこうした方がいいとかこうすべきだと言われると、そうなのかなと思ってしまうものである。人の言葉に素直に耳を傾ける柔軟な姿勢や態度と、自分で決断しそれを揺らがせない強さを保つことのバランスは難しい。
イソップ物語の「ロバを売りに行く親子」と、トヨタの豊田章男社長がこの話を引用したエピソードや背景を合わせて紹介する。(1,700文字)

「ロバを売りに行く親子」


ロバを飼っていた父親と息子が、そのロバを売りに行くため、市場へ出かけた。2人でロバを引いて歩いていると、それを見た人が言う、「せっかくロバを連れているのに、乗りもせずに歩いているなんてもったいないことだ」。なるほどと思い、父親は息子をロバに乗せる。

しばらく行くと別の人がこれを見て、「元気な若者が楽をして親を歩かせるなんて、ひどいじゃないか」と言うので、なるほどと、今度は父親がロバにまたがり、息子が引いて歩いた。

また別の者が見て、「自分だけ楽をして子供を歩かせるとは、悪い親だ。いっしょにロバに乗ればいいだろう」と言った。それはそうだと、2人でロバに乗って行く。

するとまた、「2人も乗るなんて、重くてロバがかわいそうだ。もっと楽にしてやればどうか」と言う者がいる。それではと、父親と息子は、こうすれば楽になるだろうと、ちょうど狩りの獲物を運ぶように、1本の棒にロバの両足をくくりつけて吊り上げ、2人で担いで歩く。

しかし、不自然な姿勢を嫌がったロバが暴れだした。不運にもそこは橋の上であった。暴れたロバは川に落ちて流されて死んでしまった。

仕事中にこの話を思い出すことが時々あります。人に流されるつもりはないけれど、自分にとって何が正しいかがわからなかったり、自分の決断に自信がないから自分で決められないという場合も多いので、そうなると、単純な教訓を越えたもっと複雑な話になってくるかと思います。

トヨタ社長のマスコミ批判

「ロバ売りの親子」の話は、のちに親子ではなく夫婦バージョンもできて広まっているのだが、2020年にトヨタの社長が株主総会の質疑応答時間に”唐突に”その話を語って話題になった。

「話は長くなりますが、ロバを連れている老夫婦の話をさせていただきたい」

2020年6月11日に開かれたトヨタの定時株主総会の壇上、話題が2021年3月期決算の業績見通しに及ぶと、豊田章男社長(64歳)はおもむろに語りだした。

「ロバを連れながら、夫婦二人が一緒に歩いていると、こう言われます。
『ロバがいるのに乗らないのか?』と。

また、ご主人がロバに乗って、奥様が歩いていると、こう言われるそうです。『威張った旦那だ』。

奥様がロバに乗って、ご主人が歩いていると、こう言われるそうです。『あの旦那さんは奥さんに頭が上がらない』。

夫婦揃ってロバに乗っていると、こう言われるそうです。『ロバがかわいそうだ』。

要は『言論の自由』という名のもとに、何をやっても批判されるということだと思います。

2020.9.7. 「週間現代オンライン」より

「大規模リコール(解職請求)」が発生すると「経営危機」と報じられ、コストをカットすれば「下請け叩き」と非難され、執行役員の数を減らせば「独裁体制」と言われる。そのくせ、業績が上がると今度は一転、しれっと豊田氏の経営を称賛。

何を言おうが、何をしようが、その時々の気分で好き勝手に報じるだけのマスコミの相手はしていられない。今回の決算報道のみならず、積年の思いが込められたのが、「ロバの話」だったのだ。

2020.9.7. 「週間現代オンライン」より

経営者やリーダーのご苦労がしのばれますが、たとえそういう立場になくても、世間の大多数の人と同じことをしていなかったり考えていない限り、ロバ売りの親子や夫婦みたいに注目されていろいろ言われますよね。

言いたい奴には言わせておけと自分に言い聞かせるのですが、なかなか難しいです。

私は平気です。批判を受けるのは日常茶飯事ですが、カラスがかーかー鳴いているなぁと思って流せますよ。私にとってはお褒めの言葉もカラスのかーかーと同じなんです。

【参考】
ウィキペディア
「週間現代オンライン」(2020.9.7)

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