カマキリのシンボルほか、戦国武将のカブトに装飾されたカマキリや、京都の祇園祭の山車(だし)に飾られたカマキリの紹介。交尾中にオスがメスに食い殺されたり、脱皮中に落下して死んだり、カマキリの生態メモは、人間理解にも役に立つ。(1,700文字)
クライエントさんの話に出てきて、気になって調べたカマキリ研究備忘録です。
カマキリのシンボル/象徴
幸運の象徴
カマキリは、その姿勢が祈りを捧げるように見えることから、「拝み虫」とも呼ばれる。このため、幸運をもたらす存在として広く認識されている。
問題解決の暗示
カマキリは素早く獲物を捕らえる能力から、「道を切り開き、問題を解決する生き物」としての意味も持っている。この特性が、困難な状況における解決策の象徴とされている。
★カマキリが素早く獲物を捕らえる様子は、こちらのウィキペディアの1分動画参照。
神の使い
カマキリの英名「praying mantis」は、ギリシャ語の「mántis(預言者)」に由来し、古代ギリシャでは神の使いとして人間にメッセージを伝える存在と考えられていた。このため、カマキリを見ることは神からのメッセージとされることもある。
子宝の象徴
カマキリは一度に多くの卵を産むことから、その卵は子宝の象徴とも見なされている。特に家庭や子育てに関する願いが込められることが多い。
勇気の象徴
中国の故事にはカマキリが馬車に立ち向かう姿が描かれ、勇気や無謀さの象徴としても用いられている。このことから、戦国時代には兜にカマキリの立物が取り付けられることもあった。
故事「蟷螂の斧」(とうろうの おの)
カマキリの漢字は、「蟷螂」という難しいもので、これを音読みしたのが「とうろう」。つまり「蟷螂の斧(とうろうの おの)」は、「カマキリの斧」という意味で、もともとは中国の故事である。
中国の斉国の君主であった荘公が、ある日馬車で外出した際、道の真ん中に一匹のカマキリがいた。そのカマキリは逃げ出すことなく、前足を振り上げて馬車に向かってきた。荘公はカマキリの勇気に感銘を受け、わざわざ車の向きを変えさせ、カマキリを避けて通ったという。
この故事は日本にも伝来し、カマキリは勇気ある虫として認識されるようになった。その結果、戦国時代には兜(かぶと)にカマキリの立物(たてもの)を取り付けたものもあった。
ずいぶん重そうだし邪魔そうですが、戦国武将は こんなものを被って戦ったんですね。
この故事は京都の祇園祭にも影響を与えており、「蟷螂山」(とうろうやま)という山鉾がある。この山鉾には、からくり仕掛けで動くカマキリが載せられている。
※ 現在の日本では、この故事の意味が変化し、自分の力量を知らずに無謀な行動をとることを揶揄する際に用いられることもある。
交尾の最中にメスに食い殺されるオスのカマキリ
カマキリのオスは、メスに共食いされてしまうことがある。稀であるが交尾の際も共食いが行われ、オスはメスに不用意に近づくと、交尾前に食べられてしまうので、オスはメスに見つからないよう慎重に近づいて交尾まで持ち込む。飼育環境下では交尾前に食べられてしまうこともあるが、自然環境下では一般的に交尾の最中(もしくは交尾後)、メスはオスを頭から生殖器まで食べる(必ずしも食べられるわけではなく、逃げ延びるオスもいる)。
カマキリの脱皮は命がけ
カマキリは成虫になるまでに数回の脱皮を行うが、脱皮に失敗して死ぬことがあるそうだ。意外に思ったが、カマキリの脱皮失敗はよくあることで、特に最後の脱皮(羽化)での失敗が多いという。カマキリはぶらさがって脱皮するので落ちて死亡したり、死亡しないまでも後脚が曲がってしまったり、脱皮殻から抜けなくなったりすることもあると聞いて、わたしたちの精神的成長と重ね合わせて興味深かった。
いよいよ最後の脱皮がもっとも命がけだったり、脱皮殻(古い自分)から抜け出すのが難しい・・・なるほどと思いました。
★NHKアーカイブスに、カマキリの脱皮映像(1分45秒)があった。ユング心理学では、変容の象徴としてよく蝶が引き合いに出されるが、こうしてみるとカマキリの羽も美しい。