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ユング派分析家道20周年に寄せて:恥をかく勇気

スイス・チューリヒ、ユング研究所の門

1,000文字.

コロナにかかって引きこもっているうちに20周年を迎える

流行り病に罹ってだらだらしているうちに、ふと気づいたらこの道に入って丸20周年を迎えていた。

コロナの症状はたいしたことなかったが熱が下がってもいつもより気力がない状態が続いたので、仕事以外の予定はすべてキャンセルして1ヶ月近くも内向生活を極めたところ、映画や読書三昧で思いがけない充実した日々が過ごせた。

日常生活をすべてリセットしても残ったユング心理学

読書の方は心理学や哲学の本は読む気がしなかったので、司馬遼太郎の長編歴史小説から始めて現代作家の小説や昔の純文学を乱読したが、どんな作品に触れてもユング心理学や仕事のことが頭に浮かんでくるのは体調不良中でも変わらなかった。他のことはいったん休止してみるとすべてどうでもよいものに感じられ、趣味も人付き合いも一切やめたらこんなに時間ができるならそれも悪くないと思ったが、ユング心理学は残り、ずっとサボっている発信を再開しなくてはと気がはやるぐらいだった。

初心は忘れてないが・・・

2005年3月に分析心理ドットコムのホームページを開設して以来、わたしは「2002年の春、スイスでユング心理学に出会ったときコレだと思った、一生飽きないものを見つけたと思って興奮した、この面白さを他の人にも伝えて”あげなくては”と思った」と何度も言ってきたが、いまだにこのミッションを果たせていない。

恥をかく勇気

少し前に、分析家の同僚が講師を務めるオンラインセミナーにちらっと顔を出させてもらったことがある。一言二言発言して恥をかいた気がして、そのあとしばらく落ち込んだ。専門家として複数の人の前で話すことはわたしにはハードルが高く、ユング研究所やISAP(途中で分裂してできた新ユング研究所)での講義は一度もしたことがない。(挙手すれば誰でも講師になれる。)その点、あとで消したり書き直したりできるブログはハードルが低いが、それでも恥をかくことにはかわりない。何も書かず黙っていれば恥もかかなくてすむのだから。この話を自分の分析セッション中にしたところ、アメリカ人の分析家に「クローゼット・ユンギアン」、押入れの中に隠れているユング派分析家だと笑われた。押入れの中で死にたくないので、「恥をかく勇気」をモットーに21年目を過ごしたい。

「嫌われる勇気」より「恥をかく勇気」を持つことの方がもっと難しい気がします。

ユング研究所の門(とーなん2005撮影)

20年前の2002年3月にふらりとこの門を開けました。そのときの詳細は、恥だらけの裏履歴(2016)に書いています。


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