切った張ったの恋愛騒動や夫婦喧嘩、泥沼の離婚劇を始め、人間関係のこじれがエスカレートして惨事につながるとき、そこにナルシシストとボーダーラインの組み合わせが見られることは少なくない。また、たとえ片方がナルシシストでなくても、交際相手がボーダーラインだった場合には、ジェットコースターのような関係や危険な展開が待ち受けていることも多い。そんな関係の心理学的背景をうまく解説してくれている英文の投稿を見つけたので、訳して紹介する。(1,600文字)
ボーダーラインはこうしてナルシシストを打ちのめす
ボーダーライン的性質(境界性パーソナリティー)は、ナルシシスティック(自己愛性パーソナリティー)だったりサイコパス的な養育者の影響を受けて形成される※ため、ボーダーラインの人たち(以下、ボーダーライン)は、ナルシシスティックな人たち(以下、ナルシシスト)の要求にとても敏感である。
※ナルシシスティック、またはサイコパスの養育者を持つ子供が、必ずボーラーダインになるというわけではない。
ボーダーラインは、幼い頃からナルシシストを救済する役回りになるよう訓練されている。ナルシシストがどんなときに傷つくのを学びながら、自分を犠牲にすることや嘲笑の対象になること、自分を貶めるような態度を身につけていく。
軽蔑されるようなキャラクターを演じることで、(自分だけが可愛い)ナルシシストを持ち上げ、奉仕するわけである。
ところがこの訓練によって、ボーダーラインはナルシシストをどうやったら傷つけることができるかもよく知っている。「やってはいけない」と覚えてきたことをやりさえすればナルシシストが深く傷つくということを、ボーダーラインは本能的に知っているため、ナルシシストを誰よりも深く傷つけることができる。
たとえばボーダーラインがよく使う手は、三角関係の泥沼を作り出すことである。ナルシシストの気を引いて、自分をもっと好きにならせようという目的ではなく、ボーダーラインはこれを、ただ、ナルシシストの心臓をナイフでえぐるために行う。ボーダーラインのやり方は非情で、相手に致命的なダメージを与えるもので、しかもその傷はずっと後を引くような類のものになる。
ボーダーラインは、ナルシシストの養育者からインナーチャイルドを守るために形成された性質であるため、ボーダーラインはナルシシストが持っている戦術はすべてもっている上で、ナルシシストとは違う強みを持っている。それは、ナルシシストが人からどう見られるかを気にするのに対し、ボーダーラインはひとたび裏切られたと感じると、自分自身の社会的イメージが壊れることなど少しも気にしないことである。ボーダーラインは恥も外聞もかなぐり捨て、どんな手段を使ってでも復讐を成しとげることに燃えることができる。
ナルシシストが相手をコントロールするために使う戦術を、ボーダーラインは、自分をも含めた一切合切を破壊することに使うのである。ボーダーラインは、相手を徹底的に深く傷つけることによってのみ、自分の自尊心とこころの安定を取り戻すことができると信じている。その結果、手段を選ばないので、犯罪につながることにもなりかねない。
ボーダーラインは、自分が虐げられたときそれを正確に察知し、その瞬間に感じた怒りをコントロールすることができない。子供としてサイコパスの大人に立ち向かうためには、タガが外れたようなやり方でぶつかるしかなかったからである。
やがて怒りが鎮まったとき、ボーダーラインは自分のやったことを後悔したり恥じたりするのだが、時すでに遅しで、事態は取り返しのつかない状況になっている。
はたして傷つけあった両者は別れ、二度と会うことはなくても、ジェットコースターのようだった関係への未練と混乱はずっと後に引く。両者は共に、関係初期の相手の美しいイメージと、最後に相手が実際に見せた醜態という現実の間で身動きできない状態に陥る。
ナルシシストはボーダーラインにとってこの上なく完璧な犠牲者であり、ボーダーラインはナルシシストにとってこの上なく完璧な恋人なのである。
ボーダーラインはなぜ、結局は自分を利用したり虐げたりするナルシシストに親近感を持ち、自分のその気持ちを好意だと勘違いしてしまうのか。親のあふれる愛情を知らないためにボーダーラインは、繰り返し繰り返し、その穴に落ちてしまう。
(こちらの英文記事を基にとーなんが一部変更して訳)
ユングは、精神科医として患者に診断名をつけることに関心を持ちませんでしたし、人は誰でも多かれ少なかれナルシシスティックな面を持っており、あとから考えると後悔するような行動を衝動的にしてしまうことだってあります。
当記事は、人間心理の一側面を理解するための一助として、あえてカテゴリー化、パターン化した見方をご紹介していますので、その前提で読んでいただければと思います。