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匿名なら大胆になる日本人
佐藤直樹氏はまた、行政に通報したりお店に貼り紙をするのは、そのほとんどが匿名で、実名で顔出しの自粛警察というのはあまり聞かないということ、そして日本人のSNSでは匿名率が70%を超えていて、他国の30~40%台と比較して相当高いことを指摘している。
この匿名性というのがクセ者で、日本人は匿名の存在になったときにタガがはずれる。世にいう「旅の恥はかき捨て」である。つまり、「世間」のソトに出て「世間の目」がなくなったときに、自分が所属する「世間」のウチではおよそ考えられないような、傍若無人で大胆な行動に出たりする。
佐藤直樹2020年8月27日より
匿名の存在になったときに、ふつうの人でも、お店に脅迫電話をかけたり、貼り紙をすることに心理的抵抗感がなくなるのだ。
自粛警察になりやすいタイプ
佐藤直樹氏は、自粛警察になりやすいタイプとしてあるテレビ番組で臨床心理士が列挙していた3つの特性は、日本人の典型的な特性ともいえるとして、それぞれ以下のように説明している。
①ヤケになりやすい人
自分に該当しない性質だと思われた方もいるだろうが、佐藤直樹氏によると、哲学者の和辻哲郎は、日本人の特徴的性格としてヤケ(自暴自棄)があり、それが夏の暑熱と湿潤という「モンスーン」型の日本の風土からくると80年以上前に指摘しているそうだ。
②自分に自信がない人
日本では「出る杭は打たれる」という「世間のルール」があり、ちょっとでも目立てば叩かれるので、自己評価を下げておいたほうが、「世間」に受け入れられ、自分が生きやすい。その結果、自分に自信がない人が多い。
③ストレスをため込む人
日本には細かな「世間のルール」が山のようにあり、それにがんじがらめに縛られているストレスは半端ではない。犯罪率が他国と比べて圧倒的に低く、自殺率が先進国中最悪なのもそれと無関係ではない。つまり、日本人の抱えているストレスは基本的に非常に大きい。
というわけで、指摘されている自粛警察になりやすいタイプとは、じつは典型的な日本人のタイプであることになる。したがって、誰でも何らかのきっかけがあれば、自粛警察になる可能性があるということだ。
佐藤直樹2020年8月27日より
自粛警察は、肯定的な響きにもなる「警察」という呼び名より、実態からして「自警団」や「チンピラ」と呼ぶほうがふさわしいという辻田 真佐憲氏も、自粛警察の背景にはこれまで指摘されてきた通り「正義の暴走」と「嫉妬の発散」があるが、感情に踊らされないためにも、自分のなかにもそういう部分がないかどうか、胸に手を当てて考えてみる必要がありそうだと述べる。
※”多発する「自粛警察」の全貌…背景に「正義の暴走」と「嫉妬の発露」──「非常時だから」で終わらせてはならない” 辻田 真佐憲(講談社オンライン2020年5月30日)より