もっとも与えられたくない試練は何かと聞かれたら、今のわたしは自分の子供に万一のことが起きることだと答える。もし自分より先に子供が死んでしまったりしたら、そのあとどうやって生きていくのか想像もつかない。人生でいちばん遭いたくない不幸だと思う。
エリック・クラプトンの大ヒット曲、Tears in Heavenはメロディに馴染みはあっても、英語力の問題で歌詞を味わっていなかったので、この歌が亡くなった4歳の息子への追悼メッセージだということを最近まで知らなかった。
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エリック・クラプトンの息子の死
当時4歳半だったクラプトンの息子は、ニューヨークの高層マンションの53階の窓から転落して即死した。清掃員が来て掃除中だったために窓が開いていたのだ。息子も息子の母親もクラプトンとは一緒に暮らしていなかったが、クラプトンは自分によく似た息子を可愛がり、その前日には息子をサーカスに連れて行っており、当日はいっしょに動物園に行く予定だった。
息子の生前、クラプトンは、酒とドラッグに溺れた最低の人間だった自分にまつわる唯一の「善」が息子のコナーであると語り、息子の誕生をきっかけにリハビリ施設にも入ってアルコール依存症を克服していた。
46歳の誕生日の二日前に行われた息子の葬儀に参列したあと、失意のクラプトンがしばらく自宅にこもって人々の前に姿を見せなくなってしまったとき、多くのファンが、彼が再びドラッグと酒の世界に舞い戻ってしまうのでのはないかと心配したが、クラプトンはこの悲劇の翌年の1993年、亡き息子に捧げる曲Tears in Heavenを発表し、音楽活動にも復帰した。
クラプトンは、2003年の日本公演を最後にこの歌を歌うのをやめている。当時の喪失感がなくなったからというのが理由だそうだ。
2019年10月現在74歳のクラプトンは、聴覚に問題を抱え、ギターを弾くのも困難な状態になっている。(2018年BBC2とのインタビューより。)今の彼にとって、この歌はどういう意味をもつのだろうか。
ニューヨーク公演中のエリック・クラプトン (2015年5月)
Tears in Heavenの歌詞
この歌の和訳はググるといくらでも出てくるので、そちらを参照していただきたいが、内容はだいたいこんな感じ。
もし天国で会ったら、父さんのことを覚えていてくれるだろうか。
もし天国で会ったら、前と同じようにしていられるだろうか。
父さん、強くならなくちゃいけないな。そして生きていかなくちゃいけないな。
だって、ここは君のいる天国ではないのだから。・・・
Would you know my name
If I saw you in heaven?
Would it be the same
If I saw you in heaven?
I must be strong and carry on
‘Cause I know I don’t belong here in heaven
背景を知った上でこの歌詞を一度頭に入れると、いつでもどこでも、この歌が流れてきた瞬間に涙腺が緩む。スポーツジムで流されるのは勘弁してほしい。
日本語訳詞つきのYoutube
Youtubeのコメントより引用
この記事は、大切な人やペットを亡くしたクライエントさんや友人に読んでもらいたくて書き始めたが、このYoutubeを見た人たちのコメントを読んでいると、改めて読んでもらいたい人たちの顔が浮かんでくる。
この曲は、息子が大好きで、よくギターを弾きながら歌っていました。その息子が6日前に亡くなりました。今は、この曲が息子からの私に対するメッセージだと思って聴いています。
結婚もしていませんし子供も居ませんが、昔、一緒に15年過ごした猫に聴かせたいな。 虹の橋の向こうで待ってくれてると良いな。
小学2年生の時、父が病気で亡くなった時、『お母さんと妹は僕が守るから』と涙をこらえて言った事を思い出します。父は安心して見てくれてますかね。天国で会った時父が僕を覚えててくれたらいいな。
クラプトンが大好きだった主人は、2年前あちらに逝きました。 確かに生きてこの歌をいっしょに聴いていたのに、今はいません。 私はお迎えを待っていますが、まだ呼ばれないようです。 だから歌にあるように、私はここにいて、頑張らなきゃと思います。
私も7年前に一人息子を亡くしました。母一人、子一人でした。クラプトンの大ファンですが、この曲は今日まで聞くのを避けていました。聞くのが怖かったからです。寂しく、苦しくなるのが分かっていたからです。でも、今日しみじみと聞きました。そして聞いて良かった思いました。私もクラプトンのように、息子の為にも強くならなければといけないと思えたからです。
2ヶ月前に11歳の息子を亡くしました。会いたい。息子に会いたい。
10年前次男を亡くしました。たった2ヶ月と1日の命でした。天国で会えたらもう1度強く抱き締めたい。この曲を聴くと涙が止まらなくなります。強く前を向いて天国に行ける日まで、今を大切に生きていこうと思います。
昔はこの曲をカバーするミュージシャンに 「クラプトンにしか歌えない歌なのに」とか思って、 嫌な感情を持ってましたが、間違いでした。 近しい人を亡くしてわかったのは、 誰にでもそういう人がいて、その人に向けて歌いたい気持ちに なるのだと分かりました。残されたものは強く生きていかなくちゃ と思わせてくれて、悲しみを乗り越えられそうに感じます。
エリック・クラプトンの人生を知る資料
エリック・クラプトンのドキュメンタリー映画(DVD)、『Eric Clapton: A Life in 12 Bars』(邦題『エリック・クラプトン 12小節の人生』には、「ギターの神様」と呼ばれた彼の、”天国と地獄を行きつ戻りつするような、過酷で数奇に満ちた人生”が描かれている。
2018年10月に出版されたSlowhand: The Life and Music of Eric Claptonには、映画よりさらに詳細な事実が明らかにされているとのことだが翻訳版はまだ出ていない。
※この記事を書くにあたって、ウィキペディアのほか、Cat Katさんのページとツグトヨのブログを参考にした。