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正義を振りかざす人の心理、鴻上尚史はこう語る

鴻上尚史氏が、正義を振りかざす人の心理について、なるほどと思えることを言っている。

インターネットやスマホの時代になって、誰でも自分の考えを世間に向かって自由に発信できるようになったが、たとえば自分が少しぐらい何かを知っていたとしても、もっと知っている人がいくらでもいるし、自分の意見は否定されたり潰されたりすることも多い。自己顕示できるチャンスはやってきたものの、自分の小ささも直面せざるを得ないため自意識を満足させることは難しい。

そんな中、正義を語っている限りは、突っ込まれたり否定されるかもしれないと怯える必要がないというのだ。

「道路いっぱいに広がっている自転車がじゃま」、「無許可で路上ライブやっているやつらは法律違反で許せない」などの「正義の言葉」は、インターネットの世界でも否定されません。
だから、何かを言って否定されたくない人は、「正義の言葉」を意識的にも無意識的にも語るのです。

鴻上によると、正義に反する人たちへの怒りは、「何者かになりたいのに実際には何者でもない人」が、世間に向かって主張して自分の存在をアピールするための、誰からも否定されない格好の材料になる。

何者でもない自分が唯一堂々と自己主張できるのが、正義に反する人たちに対する通常のレベルでないイライラなのです。

(中略)

他人に対する怒りを自己表現の基本にするよりも、好きであることを自己表現の基本にすることが精神衛生上も、人間としてもはるかに素敵なことです。

引用は「鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋」より。

おわりにあれこれ

鴻上尚史のこの本の内容は、「ワイドショーに見るスケープゴートの深層心理学:人の心に潜む影」を読んでいただいた人に教えてもらった。

鴻上尚史といえば、同僚の分析家に「すごい本に出会った!」と教えてもらっていた「空気を読んでも従わない」をまだ読んでいなかったのを思い出した。

クライエントさんからも教えてもらった同著者の「世間と空気」(講談社現代新書)も必読書。

世間と空気については、こちらのページで紹介したユング派分析家の本、「日本人の心の深みへ」もある。

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