(2018年8月30日、更新)
仕事中、輝くような素敵な笑顔に接して戸惑うことが時々ある。無理して作られているのがわかるような痛々しい作り笑いならともかく、そういう笑顔は完璧で美しい。そしてその笑顔は、状況がどうであれ自分は大丈夫だと主張し、同情はもちろん心配のかけらさえも入り込ませる隙を与えてくれない。
「貴女のその笑顔に欺かれる気がする。」長い付き合いのクライアントさんに思い切ってそう言った時、彼女は少し沈黙した後で、「笑うセールスマンって知っていますか? わたしの笑いって、あのオーッホッホッ笑いですよね?」と静かに言った。
おそらく20年以上思い出すこともなかった「笑ゥせぇるすまん」の顔が瞬時に頭に浮かんでわたしは絶句した。どんな話なのかは、元々知らないか、あるいは思い出せないが、喪黒福造(もぐろ ふくぞう)というあのキャラクターは、一度見たら忘れられないインパクトがある。
悲しくても人を笑わせる道化師(ピエロ)ならよく聞くが、美しい女性が、自分の魅力的な笑顔を「笑ゥせぇるすまん」の不自然に貼りついた不気味な笑い顔と重ねた時、そのイメージのギャップに衝撃を受けながら、複雑な気持ちになった。
「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」と自分に言い聞かせているとも彼女は言う。
笑う門には福来る、とも言うが、心の奥底までその効力があるかどうかは疑わしいと思う。
素敵な笑顔は、少なくとも周りの人をハッピーな気分にさせる絶大な力は持つ。好意や愛情も返ってくるし、それが美男美女の笑顔となると、人をコントロールすることもできるだろう。でも、笑顔仮面が仮面の下の自分までだますことはできない。他者からの好意や愛情だって、それが笑顔仮面によって得られたものなら、それによって仮面の下の自分の心が満たされるのは難しいのではないだろうか。
おまけ
この記事を読んだ別のクライエントさんから、面白いコメントをもらった。
とーなんがそのクライエントさんに向かって、「あなたはご自分の美しい笑顔で私を裏切りましたねぇーーーーーー。ドーン!!!!」と言っているイメージが、突如浮かんできた。そのクライエントさんにとって、とーなんが「笑ゥせぇるすまん」ではないかと思った。
とのこと。この「ドーン」は、とても興味深いので、別のところに書いてみた。