フロイト派の精神分析は、「1週間に5回」が基本です。
1回50分~60分で、1回1万数千円がふつうですが、1万円として計算しても、1週間に5回で5万円、1ヵ月、ざっと20万円かかる計算です。1ヵ月だけやるという人は中断以外には、あまり考えられないので、半年で120万円、1年で240万円です。
びっくりするような巨額ですが、わたしは実際に10年以上それを続けた人、続けている人を数人知っています。
彼らは大富豪ではなく、また深刻な心の病をもった人でもなく、「精神分析をやっていなかったら、とっくに豪邸が建ったのに。」と笑いながら、精神分析を受けるために、せっせと働いています。
「精神分析を休めるのは、分析家が休みをとるときだけ」だそうです。
強制されるわけではないはずなので、自分から休みを取りたいとは思わないということでしょう。
精神分析が身近なものであるわたしにとっても、すごい!のひとことにつきます。
一方、ユング派の精神分析は、定期的なものだと、1週間に1度、多くても2度程度が一般的だと思います。
(不定期で、一時的に集中してやることは、あります。)
スイスのユング研究所でトレーニングのために分析を受ける人たちは、2度がふつうでした。
研究生として最低300時間というノルマがあるので、それをこなすためにも、週に2度は必要です。
ユング研究所に留学している人たちは、スイスに来る前に、すでに数百時間の分析を受けている人が多く、それはつまり、分析の価値をじゅうぶん知っているということだと思いますが、それまでに分析を受けたことがなかったわたしは、300回、毎回決まって、「あー、分析は高いなぁ!」と思いながら、分析家のところに行きました。
わたしの分析家の学生割引料金は、当時の為替レートで1回1万円でした。(料金は分析家によっても違うし、学生割引料金を設定しない分析家もいます。)1万円でできることはたくさんあります。高級レストランで優雅な食事ができるし、エステやマッサージが堪能できるし、ちょっとした一泊旅行だって可能です。1万円で買えるものときたら、言うに及びません。
その大枚を、たったの1時間に、しかもなんの形もないものに使うとは・・・。
でも、分析からの帰り道、わたしはいつも「満足」していました。
帰り道では、分析は高いなぁ、と感じなかったのです。
そしてその数日後、分析への道中には、やっぱり「あぁ、高いなぁ! 話すこともないのになぁ。」
と思うのでした。
分析というのは、本当に不思議なものです。