長期休暇をとりますので、精神科の薬を服用中の方はお引き受けできません。
以下の文章は、「うつ病に苦しんでいる人への最適なアドバイスは何ですか?」という問いに対する回答としてQuoraに投稿した(2018/12/2)ものです。
当オフィスのカウンセリングは、このような視点に立っていますので、参考にしてください。
うつ病は、今までの生き方を見直し、より本来の自分らしく生きていけるようになるためのきっかけを与えてくれるものであるという点では、むしろ歓迎されるべきものである、という考え方があります。
スイスの分析心理医のユングの理論を紹介します。
ユングは、無気力になったり抑うつ状態に陥ったとき、なくなってしまったように感じられる心的エネルギーは、実際には、消えてしまったわけではなく、エネルギーの向かう方向が変わっているだけなのだと言っています。
具体的に説明すると、こういうことになります。
抑うつ状態に陥ると、それまでは現実生活で適応するために自然に流れて、自分の意志で使うことができていた心的エネルギーは、外側方向への流れを止め、前進する推力を失って停滞する。
停滞したその心理的エネルギーは、自分の内側(無意識の領域)に向かって逆流する。
外の現実にエネルギーが向かわないため、現実適応ができなくなるだけでなく、今まで価値があると思っていたものが無価値に感じられ、内的葛藤に引き裂かれて身動きが取れなくなり、自信喪失、疑惑、時には希死念慮さえ出てくる。
さて、ここからが本題です。
このように心理的エネルギーが逆流して内側に向かうのには、目的があるとユングは考えました。
その目的とは、内的不均衡を調整し、「内的適応」を達成させることです。
わたしたちの人生は、生まれたときから始まる、外的適応の連続です。誰もが、最初は母親などの養育者に、そして他者や外部に自分を合わせ適応させながら成長し、その適応パターンを使って生きています。
それが人間として社会で生きていくことですから、多かれ少なかれ、自分自身の内的世界がなおざりになってしまうのは自然なのですが、その程度がひどくなってくると内的世界側が我慢できなくなり、「こっちも見てくれ!」と反乱を起こします。それが、心的エネルギーの逆流であり、その反乱に遭うや、もはや勝ち目はありませんから、力づくで内面に目を向けさせられるのです。
抑うつ状態になって、外的適応ができなくなると、現実生活が立ち行かなくなりますから現実的に困りますし、気分的な苦しさも半端なものではありません。しかしそれでもなお、この現象には肯定的な意味が含まれていることを強調させてください。
心的エネルギーが内側に向かい、内的世界が活性化されると、自分の過去やコンプレックス、弱点、欠点に直面せざるをえないのですが、ここで内的な適応を達成したあかつきには、今までよりもっと本来の自分らしく、もっと成熟した状態で、改めて外的適応ができるようになります。マイナスがゼロになるのではなく、必ずプラスになります。
うつ状態のまっただ中で苦しんでいる最中に聞かされるには、楽観的すぎるように思われる話かもしれませんが、物理学のエネルギー保存の法則を心に応用したユングのこの理論が机上の空論ではないことを、わたしは仕事柄、何度も確認してきました。
わたしは、うつ病に対する精神科の薬物療法を否定している立場にはありませんが、このような見方もあるということで、ご参考にしていただければ幸いです。
(2018/12/2 Quoraに投稿した内容)