「自己実現」の概念を、最初に提唱したのはユングです。ただ、ユングは「自己実現」よりも「個性化」の方を用語として好んで用いたので、ここでも「個性化」を使います。
ユングは、「心理的発達」は、中・高年になっても一生続くものだと考え、この視点から人生の課題を大きくふたつに分けました。
前半の課題は、自我とペルソナの発達で、ここでは自分のアイデンティを確立し、社会的・文化的に適応し、大人としての役割を果たすことが課題となります。仕事をすること、家庭を築いたり、子育てをしたりすることもこれに含まれています。
一方、後半の課題は、自分のそれまでの人生で活かされていない、潜在的な性質や能力を活かして、より「自分らしく」なることです。これがすなわち個性化なのです。
時に「個性化」は「自分らしく生きること=自分勝手に生きること」として、社会適応と矛盾するもののように誤解されますが、ユングは社会や周囲との調和を保ちながらさらに個性化することができるし、逆にそうでなければならないのだと強調しました。
ユングは、中年期以降のこの人生の後半の課題、すなわち「より自分らしいあり方を実現していくこと」をとても重要視したので、ユング心理学は、時に「中年の心理学」と呼ばれたりします。
「個性化」はユング派の分析で扱われる重要なテーマです。 ここでは、他のページで触れている項目、たとえば「影の統合」などが関わってきます。