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ライフワークにしたい19世紀の女流画家に出会った日:ヒルマ・アフクリント

(全文2,300文字、最初に要約あり。)

2022年12月22日冬至の日にストックホルム現代美術館を訪れて、ライフワークになりそうな研究対象を見つけた。

すべての作品が、元型(アーキタイプ)と象徴(シンボル)の宝庫になっているようなその画家の名はヒルマ・アフクリント(Hilma af Klint 1862 – 1944)。ユングらと同様に、人のたましいや宇宙の神秘について、真理といえるような何かを知りながら、ユングらと違って、生前は世の中にその名を知られることはなかった人物である。

世間で認められることには無関心だったアフクリントだが、理解してもらえるはずだと期待して謁見したルドルフ・シュタイナーには無下にされており、そのときの落胆は想像するにあまりある。

芸術家としてのアフクリントの研究は進んでいるが、精神面からの研究はまだあまりなされていない上、アフクリントはストックホルムで一生を過ごしたスウェーデン人で、現地に住んでいるわたしがアクセスしやすい資料も多いため、これはわたしに与えられたミッションではないかと感じた。

アフクリントの軌跡を知ることで、男女問わず、感受性や精神性が人一倍高いために、能力があって聡明なのにもかかわらず生きづらさを感じているクライアントさんたちの理解の一助にもなるにちがいないと思っている。

別のページに書きましたが、冬至にも意味を感じています。

要約はここまでで、ここから下は冒頭の決意表明に至るまでの具体的な経緯と、アフクリントの映画や関連記事情報。それを飛ばしてユングに関係のある話だけ知りたい方は、「こころの中の対立物の融合過程のイメージ:ヒルマ・アフクリントのスワンシリーズ (2023.1.4)」へ。

2019年10月、1度目のヒルマ・アフクリント

ヒルマ・アフクリント(Hilma af Klint 1862 – 1944)。この名前を最初に知ったのがいつだったか覚えていないが、3年前の2019年にストックホルムで展示会が開かれたときには気には留めていた。ちょうど同僚のアメリカ人の分析家がニューヨークタイムズの記事を送ってくれたことも重なり、「ストックホルム在住の方はお見逃しなく!」と別ブログに書いた(2019/10/29)が、結局自分は行かず、そのまま忘れていた。

そのとき送ってもらった2019/10/21付のニューヨークタイムズの記事のタイトルは、”In Search of Hilma af Klint, Who Upended Art History, But Left Few Traces”(「美術史を揺るがせたにもかかわらず、ほとんど痕跡を残さなかった画家、ヒルマ・アフクリント」)だった。

2022年4月、2度目のヒルマ・アフクリント

今年の春、2022年4月23日にスウェーデンのユング派分析家協会が、ヒルマ・アフクリントをテーマにした講義イベントをストックホルムで開催した。

アフクリントが生前、自分の膨大な非公開作品を託した甥の息子が講師として会場に招かれた以外に、アフクリントの作品を、ユングの患者やユング自身の描いた絵と比べてその類似性について研究したブラジルの心理学者がオンラインで参加した。この講義には参加したが、わたしはこのあとまたアフクリントのことは忘れていた。

どこかにそのときのメモが残っているはずなので、掘り出してみなければ。

この講演会のリーフレット(英語)はこちら

2022年12月、3度目のヒルマ・アフクリント

そして3度目の正直となった今回。現代美術館で開催中のヒルマ・アフクリントの特別展が素晴らしくて必見だとスウェーデン人の分析家の同僚に言われて行ってきたところ、「ライフワークを見つけてしまった」と直感して興奮したのだった。

ストックホルム現代美術館 2022/12/22

なにごともタイミングがすべて。これまでぼんやり逃した2度のチャンスは、そのタイミングではなかったのだろう。

日本でもヒルマ・アフクリントのドキュメンタリーが公開された

ドイツ人の女性監督が制作したドキュメンタリー映画、”Beyond the Visible – Hilma af Klint”(2019)は、『見えるもの、その先に──ヒルマ・アフ・クリントの世界』という邦題で、2022年4月から11月にかけて、北海道から鹿児島まで、日本全国の小さな劇場で上映された。

20世紀初頭、スウェーデン。唯一無二のビジョンを確立し、カンディンスキーやモンドリアンより早く、独自の手法で抽象的絵画を描いていた画家がいた。その名は ヒルマ・アフ・クリント 。

公式サイトより

公式サイトの中で顔写真と共に紹介されている「ヒルマの甥の子、ヨハン・アフ・クリント」氏が、上のユング派分析家協会主催の講義で講師として招かれた人で、ドキュメンタリー内で頻出している。

この作品をスウェーデン語で観たが理解できなかった(英語版も地域制限がかかって、スウェーデンでは視聴不可能。)ので、日本の配給会社に問い合わせたところ、2022年12月現在、本作はまだ日本国内で配信およびDVDソフト化はされていないが、今後数年内にリリースされる予定とのことだった。

リリース情報が入ったら、お知らせします。

日本語で読めるヒルマ・アフクリントの記事

スイス在住の日本人ジャーナリスト、岩澤里美氏の記事もお勧め。
以下の記事内の「いま脚光を浴びる抽象画の先駆者、ヒルマ・アフ・クリント」の項で詳しく紹介されている。

https://newsphere.jp/direction/20220515-1/

本ページを皮切りに、アフクリント研究をスタートします。まず、最初のコラムを書きました。これを見ていただくと、わたしが興奮している理由がわかっていただけると思います。


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