このコラムでは死別に関わる日本の歌を6曲紹介しています。前置きを読みたくない人は、目次のところまでスクロールダウンしてください。
「世の中には二種類の人間しかいない」という言い方と二分法がある。わたしが思いつく二分法は「死にたいと思ったことがある人とない人」、「死の危機に直面したことがある人とない人」、「最愛の人を亡くした経験がある人とない人」という死にまつわるものなのだが、わたしにはどれもない。この歳にしてまだ親の死も経験していない。
一般的な「死」については、日々、思いをめぐらしているが、実際の経験としての死を身近に感じたことのない自分がこんな仕事をしていることに引け目を感じることもある。日常生活で人にお悔やみを言うときに、自分のことばが表面的で形式的なものに感じられて躊躇することもある。
このコラムは、「パートナーを亡くしたあとに迎える自分の誕生日なんて、意味がないどころか大嫌いな日になってしまった。」と言うクライエントさんに何かひとこと言いたくて書いている。
三日間、考えあぐねた結果、歌を贈るという結論にたどりついた。たった数分の歌が、下手なカウンセリングなんかよりずっと大きな力を持っている気がした。
Contents
死別ソングといえば真っ先に思いつくのは「千の風になって」(秋川雅史)だが、以下の歌は、ご主人が心不全で突然他界され(享年41歳)、33歳でふたりの幼子と残されたせせらぎさんのブログ「せせらぎ通信」で教えてもらった中から選んだ。
(以下、この紫アイコンはブログ内のせせらぎさん発言。)
私がどっぷり落ちた時に頼った先は音楽でした。(せせらぎさん)
旅立つ日〜完全版〜 / クリス・ハート
歌詞の一部を抜粋。
ある朝 目覚めたら
神が待ってた命に終わりが来ると
そっと知らされた
どうして僕だけが旅立つのか
見守っているよ君のこと
もしも僕がいなくなったら
最初の夜だけ泣いてくれ
お父さんを亡くされた宮木猛さんが公開されているアニメーションつきの動画(7分半)で物語がイメージとして鮮明に入ってくるが、コメント欄を読むだけでも涙が出る。
泣けます。死を伝えられたパパの気持ち。残された家族の気持ち。
(せせらぎさん)
私も末期癌により妻と3歳になる娘を残して間もなく居なくなってしまいます。
まだ30代、人生はまだまだ続くと思っていましたし、当たり前のように娘の成長を見届けられると思っていました。
もう妻と娘と長くは生きられない。そう知った時にどうして自分がとも思いましたし、妻と娘を思うと今も辛くてたまりません。
そんな心情に励ましがほしくて彷徨ううちにこの歌にたどり着きました。
(かずさん)
この曲を聞くといつも当たり前にいる人や物事に感謝したくなる。
(足立区の2児の父親さん)
今年も聞きに来ました。
娘よ、今日で18歳ですね。お空の誕生日おめでとう。
(とびまろさん)
先月、急に父が亡くなってこの曲を見つけて色々な思い出が蘇ってきて本当にまた会いたくなって辛いです。
(God of kneeさん)
月のしずく / RUI
「黄泉がえり」(2003)という映画の主題歌だそうです。原作の小説(梶尾真治1999)も映画も知らず、歌も初めて聴きましたが、月夜の美しい季節柄、背景画像もぴったり来ていろいろな思いがよぎりました。
今 見たら号泣だろうな。深い暗闇の中で静かに聞きたい曲です。布団に包まりながらでも。(せせらぎさん)
涙そうそう / 夏川りみ
Youtubeのコメント欄に、おばあちゃんの葬儀の時に流したと書いている人もいましたが、そんな場面にも合うようなしっとりした歌です。
「古いアルバムめくり〜」しょっぱなから号泣。(せせらぎさん)
あいたい / 林部智史
本当にあいたい…
私の状況まんま…いろんな方の状況も入っていますね。
林部さんの『だきしめたい』もオススメです。
林部さん、悲しい曲が多いんですかね。そういう経験をしているのかしら…
「だきしめたい」… 私はだきしめてほしい…(せせらぎさん)
何度も何度も聴かせて貰っても亡くした母を思い出し涙します😭 波枯れ果てるまで泣かせて貰っていいですよね🎶 (森彩美さん)
聞くたびに涙し亡き主人を忍ぶ事が出来、泣きたい事があるとついつい聞いてしまいます。林部さんの歌に癒されます。(中川美恵子さん)
思い出せなくなるその日まで / back number
歌詞の一部を抜粋。
世界で1番大事な人が
いなくなっても
日々は続いていく
思い出せなくなるその日まで
たとえばあなたといた日々を
記憶のすべてを
消し去る事ができたとして
もうそれはわたしではないと思う
ただただ涙が出る。Ms OOJAさんのカバーバージョン方が、さらに破壊力があった。私が女だからかな。(せせらぎさん)
AND I LOVE YOU / Dreams Come True
ドリカムの吉田美和(当時42)は、2007年に亡き夫(享年33)を追悼する”AND I LOVE YOU”という曲を作って発表した。収録時には、歌詞を1行歌うごとに涙をあふれさせていたとのこと。
●AND I LOVE YOU / Dreams Come Trueが聴けるページ
https://www.nicovideo.jp/watch/sm3645672
せせらぎさんの該当ページには、他にもたくさんの歌が紹介されています。