「負けるが勝ち」に似ているようで違う「争わざるの理(ことわり)」という言葉を教えてもらった。
争わざるの理(ことわり)とは
合気道界の大家、藤平光一(とうへいこういち、1920-2011)は、世の中の多くの人は、争わなければ生きられないと思っており、他をおさえつけても優位に立とうとしたり、勝つためには手段を選ばない人も少なくないが、それは違うと言っている。
藤平のいうことには、「争わざるの理(ことわり)」と言うと、相手の言う事に無条件に従ったり、なぐられても抵抗しない弱々しいことのように考えられがちだが、口答えしないで泣き寝入りしたり、ただ我慢したりすることは、「争わざるの理」ではない。口で言わない分、余計に腹の中が煮えくりかえっていたりもする、そんな自分の心の中の葛藤や矛盾も”争い”とみなされる。
真の「争わざるの理」とはそんな弱々しく情けないものではなく、”一番強い心”を必要とするのだという。
万流を流れ込むに任せている大海のごとき度量で、相手のマイナスを全く心に留めないでいられて初めて、争わざるの理と言えます。
藤平光一
池の底から清水が湧出している間は、池の泥水は一滴も中に入れないように、自分の心身にプラスの気を充満させていれば、相手のマイナスな気を受けつけなくてすむ、とのこと。
即、実行できる類のことではないが、これは、武士道だけでなく道とつくあらゆるものに共通する精神修行の目指す一側面であり、ユングの個性化の道も例外ではない。
次のコラムで、下世話ながら藤平光一の「大海のごとき度量」がどのように発揮されたのか気になる、という話を書いた。
「争わざるの理」が読める本
「争わざるの理」は、1964年に出版の「生活の中の合気道」の中に書かれているが、この古書、現在安いものでも2万円を超える。
値段的に手が出ないのはもとより、紙虫のいそうな古い本も欲しくないなと思いながら調べていたら、この本の中にも掲載されていることがわかって喜んで即、購入した。
読みたいと思った箇所を、発見して数分後にはキンドル版でたったの239円で手に入れて全文読めたのだから、本当に便利な世の中になったものだ。
2008年に出版された本書は、40年ほど前に英語で出版された”Ki in Daily Life”(現在も重版されているロングセラー)がもとになっているが、前書きは当時88歳の藤平光一本人が書いている。
アマゾンレビューを見ると、目当ての「争わざるの理」の章だけでなく他の章も読んでみたくなった。
「病院からの紹介」
軽いうつ病で通院していたドクターからの紹介で購入しました。
寝本で読んでますが、けっこうハマって眠れなくなります(笑)
難しい表記もないのでお馬鹿な自分には丁度良いです。
精神的にも落ち着きます。
「格が違います!」
世の中に出回っているマインドフルネスの本よりもより自然で違和感なく、それでいてドッシリと自分の中に入っていきます。
藤平光一(とうへいこういち)
藤平光一(とうへいこういち、1920-2011)は、栃木県出身の日本の武道(合気道)家。心身統一合氣道の創始者。
19歳のときに合気道の開祖植芝盛平(1883-1669)に入門する。1969年、植芝盛平が亡くなる3ヶ月前に、公式に最高段位である10段を許され、合気道では存命中に10段位を許された唯一の人物である。
植芝盛平の死後、二代道主と合気道に対する理解の違いがあったため合気会から独立し、1974年に心身統一合氣道会を立ち上げた。藤平光一の氣の原理は、スポーツ選手・芸術家・経営者などに広く活用されている。
王貞治、長嶋茂雄の他、榎本喜八、広岡達朗等も藤平光一の影響を受け、プロ野球界に大きな影響を与えた。(写真の出典はこちら)
写真から、王、長嶋両選手に勝るとも劣らない藤平光一の鋭い眼力が伝わってくる気がする。女性向けの情報誌にはよく「目ヂカラが大切!」と、目周りの化粧法が出ているが、本物の目ヂカラはこういうのをいうのだろう。
(1974年アリゾナ州立大学でデモンストレーションをする藤平光一)