(最終更新日:2022/12/10, コラムとISAP情報、合わせて1,700文字。)
来年(2023)のISAP夏季集中セミナー、一般参加可能のThe Jungian Odyssey 2023(ユンギアン・オデュッセイ、)の開催地は、トーマス・マンの「魔の山」に出てくるホテルに決まった。場所は、ダボス会議や高級リゾート地として知られるスイスのダボス。
会場のSchatzalp Hotelは、1900年代にサナトリウムとして建てられたアールヌーボー様式の歴史的建造物です。
「大釜で煮られるような関係、あなたはやりますか、それともやらずに死にますか?」
ISAP夏季集中セミナーのテーマの表題は「The Cauldron of Relationships: Do or Die?」。
Cauldronは大釜を意味する。
ここから先は、ISAPのセミナーとは無関係な、わたしの連想です。
Cauldronという英単語を知らなかったが、たんなる鍋ではない巨大な釜だったり、魔女の小道具に使われるようなこんなイメージの鍋のことだった。
この中で煮られる具材が、たとえば恋愛関係にあるふたりであり、夫婦であり、分析家とクライアントだと想像してもらいたい。
そんな不気味な釜で煮られるなんてごめんだと思う人もいれば、なにやら面白そうと思う人もいるだろう。
できあがるスープに想像をめぐらせれば、魔女にぐつぐつ煮られてできるものなのだから、なにができあがるかは想像つかない。日によって、毒にも薬にもなりそうだ。
ふつうの鍋でいつも同じ手順で作られた同じ味のスープだけを食べたい人は、関係に話を戻せば、相手に深入りすることもないので、波風立つことも少ないかもしれない。
そんな判で押したような平和なだけの関係につまらなさを感じる人は、たとえ傷つくリスクを背負ってでも、相手に深入りして、関係の中で生じるドラマや変化や深い感動を味わいたいと思う。
親密な二者がいたとき、そのふたりともが大釜に飛び込むタイプか、あるいはふたりともが大釜を避けるタイプであればいいのだが、ひとりだけが大釜に入りたい場合には、ちょっと面倒なことになる。
わたしの空想はここまでにして、以下はISAPの夏季集中セミナーのお知らせからの抜粋です。
彼の自伝的長編小説「魔の山」で、トーマス・マンは、貴族としてのモラルやこうあるべき姿と、禁じられたエロティックな誘惑への抗い難い欲望や真の愛への希求のはざまに起こる葛藤、そして迫り来る死を意識する心理を描写した。
Jungian Odyssey 2023案内文より
今回の集中セミナーでは、このような、我々を「やるか死ぬか」の究極の選択に導くような個人的、あるいは集合的な関係というものに焦点を当て、それを深く掘り下げようとする。
我々をして、そのために生きる、あるいはそのためなら死んでもよいと思わせるものは何か。それは愛か、高潔か、政治か、正義か、自由か、平等か。我々をそこに向かわせる力は、誇大化した自我(エゴ)、妄想、影(シャドウ)、悪魔のささやきといった類のものなのか、それとも、自己(セルフ)から生じる真に個性化を目指す衝動なのか。関係に含まれる危険性と安心感は、禅の公案(英語原文:koan)のように、理性では解決できない謎解きのようなものなのか。
今の時代にこそ、おとぎ話や神話、夢、宗教、芸術、ユング派の分析セッションを通して呼び起こされる気づきが、関係についての新鮮な洞察を与えるだろう。
うーん、『我々をして、そのために生きる、あるいはそのためなら死んでもよいと思わせるものは何か。』ですか。私は、だんだんこういうのが、「お金持ちの“教養人”の趣味」にしか思えなくなりました。
なかなか鋭いご指摘ですね。
今度で開催16回目になるこの集中セミナー旅行、わたしは一度も行ったことがありません。
ISAP夏季集中セミナー2023情報
ISAP(国際分析心理研究所)の夏季集中セミナー(英語)の開催期間は2023年6月3日〜10日。