ユング派の秋山さと子の引用と、江戸時代に流行した風刺画、なまず絵の紹介。(800字)
「苦しむことで、悩むことで、そして大きな問題を持って迷うことで、人は成長するが、その問題の核心は、一人の個人のあり方をはるかに越えるほど深いところにあって、人間を圧倒するような力を持って迫ってくる。」と秋山さと子は言っている。
一人の人間として、とても耐えきれないような心の揺れに襲われることがあり、それはまるで大地震のような、普通は予測できない災害である。
秋山さとこ「男ともだち」(1989)より
(中略)
それほど激しい心の動きが、人の心の奥には隠れていて、どんなにものごとのわかる人でも、強い人でも、あるいは偉い人格者でも、この心の奥にひそんでいる大なまずのようなものが動きだしたら、ひとたまりもない。
無意識の話をわかりやすく説明してくれているこの箇所を紹介しようと大鯰(おおなまず)のイメージを探していて、江戸時代のなまず絵を見つけました。
江戸時代の風刺画、なまず絵
1855年の安政の大地震で甚大な被害が広がったときに流行したのがナマズ絵という風刺画で、この頃から「地中の巨大ナマズが怒れば地面が揺れる」と言われるようになった。
わたしたちひとりひとりの心の奥にも、こんな大ナマズが息を潜めていて、いつか大暴れするかもしれない。
しかし、地震が人々の生活に打撃を与え苦しめた一方で、建築物の建て替えや都市の復興など経済的な潤いをもたらすことにもつながったように、とても耐え切れないようなこころの揺れも、必ず肯定的な側面をもっている。
下のなまず絵には、安政の大地震の復興作業で潤った大工や左官たちにナマズが小判を与えている様子が描かれている。
※参考ページ:「ナマズが暴れると地震が起こる!」ことわざが生まれたワケ