クライアントさんが、「立派な口髭を生やした綺麗な女性から、ものをもらう」という夢をみました。
夢見手は、優しくて温かい雰囲気の女性らしい女性ですが、人生のひとつの大きな転換期にある彼女に向かって無意識は、彼女の内なる男性性を表に出させたくて、言い換えると、彼女に内なる男性性を生きてほしくてこの夢を送ってきたように感じられます。あるいは、すでに内なる男性性を生き始めている彼女への応援メッセージと言えるかもしれません。
人はそれぞれ、男性であれば自分を男性として、女性であれば女性としてだけ考えがちですが、心理的事実が明らかにしていることは、私たちが全て両性具有的であるということです。
(「見えざる異性:アニマ、アニムスの不思議な力」ジョン・サンフォード、長田訳より)
人間は両性的な存在で、自分の中に男性的な原理と女性的な原理とを持っているのですが、それらがバランスよく統合され、生きられているかというと話は別です。
アダムとイブの話では、イブはアダムのあばら骨から創り出されました。もともと一つであったものが二つに別れたので、お互いに相手を求め、また一つになろうとする。その分離に由来する結合への渇望は、実際の恋愛や結婚だけでなく、一人の人間の内部で起きている現象とも考えられます。
個人のこころの中で達成されるその結合は「より全体的な存在になる」という意味で、ユングのいう個性化です。「完全な人間をつくり上げるのは、男性的な原理と女性的な原理、二つの原理の調和的な結合しかない」などと、直感的に言っている哲学者もいますが、人間の本質としてのこの心理的事実に着目して、最初に学問的に論じたのがユングでした。
女性性と男性性の対比は、陰と陽の対比でもあり、具体的な性質としては、静と動、しなやかさと強さ、受動と能動、包み込むイメージと切り分けるイメージ、守りと攻め、感情と論理など、他にもいろいろ考えられると思います。いろいろな軸から自分の行動パターンや性格を振り返って偏りが見えてきたら、自分らしくない要素ややり方を取り入れるチャンスです。今まで眠っていたその性質は、必ず、もっと自分らしく生きていくための大きな力になります。一見、自分らしくない要素が、本当に自分らしくなるための大切なエッセンスなのです。