スイスのローザンヌ、風光明媚なレマン湖畔に、IMD(通称アイエムディー:International Institute for Management Development)という世界でも10本の指に入る名高いビジネススクールがあります。定員90名という、ビジネススクールにしては少数のMBA候補生を募り、恵まれた最先端の施設の中できめ細かく質の高いトレーニングを行っています。
このIMDで、プログラムの中に1999年から取り入れられているのがPersonal Development Electiveという選択科目。この科目では、学生(MBA候補生)は、ユング研究所やISAPの資格候補生(またはすでにそこで資格を取得した分析家)と1対1の個別セッションを50分×20回行うことで単位を取得できます。分析家が学校側に報告するのは、セッションの回数のみですから、プライバシーは完全に守られます。以下、この選択科目に関するIMDの説明を翻訳して抜粋してみます。
●この選択科目は、いわば「自分を知るための個別指導」で、職業コーチング(coaching)ではありません。(コーチは別にいます。)「personal development」を目的とした、深いレベルでのカウンセリングやサイコセラピーとも言えます。
●話し合われる内容は、まったく個人次第ですが、一般的なテーマとしては、生い立ち、辛かった過去の出来事(traumatic life events) 、現在気になること、将来に対する希望や不安、重要な人間関係(親子関係や恋人・夫婦関係など)、睡眠中に見る夢の理解などが挙げられます。
●毎年、IMDの提供する20回のセッションが終わったあとも約半数は、自費でセッションを続けています。
世界各国から集まってきた彼らは多くが30代前半で、いわゆる“エリート”と呼ばれる層に属し、若くして重要なポストについてビジネス界でバリバリ働いてきた、将来有望で優秀な人たちです。一方、今まで、カウンセリングはもちろん心理学とはあまり縁のなかった人たちがほとんどですから、こういう機会が与えられなかったら、わざわざこんなセッションを受ける動機も時間もないままだったことでしょう。
しかし、必修でないこの科目に、多くの人が関心をもち、毎年、登録者数が予想を上回ることはわたしたちにとって、嬉しい驚きです。彼らはハードスケジュールの合間をぬって、熱心に、そして意欲的にこのセッションに参加し、各人各様の意義を見いだしているようです。
2011年追記
上記のプログラムとは直接関係ありませんが、2011年8月22日付の日本経済新聞によると、住友商事が、2011年10月から新たな幹部候補育成研修を導入し、スイスのIMDに40歳前後の選抜社員を派遣することに決めたそうです。