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老いの参考にしたい詩(「ツナグ」より樹木希林の朗読音源つき)

2017年9月、別のところで公開し、多くのアクセスをいただいた記事。クライエントに教えてもらった詩で、「ツナグ」という映画(2010)のエンディングで、樹木希林が朗読している。

「キリスト教くささ」を差し引いても、いい詩だと思う。「働きたいけれども休む」なんて、若い人や働きざかりの人には想像しにくい感覚かもしれないが。

詩:「最上のわざ」

この世で最上のわざは何?

美しい(←映画では「楽しい」)心で年をとり

働きたいけれども休み

失望しそうなときに希望し

従順に平静に、おのれの十字架を担う

若者が元気いっぱいで、神の道を歩むのを見ても妬まず

人々のために働くよりも、謙虚に人の世話になり

弱って、もはや人のために役に立たずとも

親切で柔和であること

老いの重荷は神の賜物

古びた心に、これで最後の磨きをかける

まことのふるさとへ行くために

「ツナグ」の映画で使われたのはここまでのようだが、元の詩には以下が続く。

おのれをこの世につなぐ鎖を

少しずつはなしていくのは、真にえらい仕事

こうして何もできなくなれば、それを謙虚に承諾するのだ

神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる

それは祈りだ

手は何もできないけれども

最後まで合掌できる

愛するすべての人のうえに

神の恵みを求めるために

すべてをなし終えたら

臨終の床に神の声をきくだろう

「来たれ、わが友よ。我、汝を見捨てじ」と。

信仰を持たず、「神」とか「祈り」という言葉にはピンとこなくても、詩の中に出てくるそれぞれの言葉を「人間の力の及ばない領域」と「それに敬意を払い、それにつながろうとすること」と考えればしっくりくる。

仕事がら、精神分析とも重ねてしまうが、無意識という、自分のはかりしれない、そして自分の力の及ばない領域に敬意を払い、たとえば夢を通してそれにつながろうとする試みは「祈り」ともいえるし、それはまた「おのれをこの世につなぐ鎖を少しずつはなしていく」作業でもある気がする。広大なその領域につながろうとするその試みは、死ぬ瞬間まで続けたとしても、「すべてをなし終える」ことはないけれど。

樹木希林の朗読音源

樹木希林の声で読まれるのがいいとのことだったので、それも探して聞いてみたが、たしかに自分でさらっと読むのとまったく違って、胸に響く。
以下、再生ボタンをクリックすると聞ける。(1分)

詩を紹介したのはドイツ人宣教師

この詩は、ドイツ人宣教師のヘルマン・ホイヴェルス (Hermann Heuvers、1890 – 1977)が、南ドイツの友人から送られてきたものとして日本人に紹介したもので作者は不明。

この詩が収められている本は、「人生の秋に―ホイヴェルス随想選集」、「人生の秋」という言葉に惹かれる。

ヘルマン神父は、第2代上智大学学長も務めた(1937〜1940年)人で、本人自身の著作もいくつかあるが、土居健郎の著書でも紹介されている。


出典ja.wikipedia.org

参考ページ

「全身がんだらけ」の樹木希林

2013年に全身がんであることを告白し、その後、何度も再発や転移を繰り返しながら、精力的に映画やイベントに出演を続けている樹木希林(1943年生まれ、現在74歳)も、「こんな老人になりたい」モデルの一人になりそうだ。

(2019年10月追記:20189月、樹木希林は75歳で逝去。)

「治療 選べる時代 人生最期をどう生きる」をテーマにした、2016年2月9日放送のNHK『クローズアップ現代』にゲスト出演した樹木は、キャスターの国谷裕子氏に「全身にがんが転移しているとはまったく思えないが?」と問われると、いつもの自嘲気味な微笑を浮かべながらこう答えた。

「来週にはまた治療に入るんですけれども(中略)私は本当、死ぬ死ぬ詐欺なんて笑っているんです」

Newsポストセブンより一部抜粋

映画「ツナグ」

樹木希林が出演し、エンディングでこの詩を読んだ映画「ツナグ」(2012)は、直木賞作家の辻村深月の連作短編小説(2014年の時点で69万部のベストセラー)を原作にしたファンタジー映画で、松坂桃李の初の単独主演作品。樹木希林は、松坂桃李の祖母役で、この映画を教えてくれたお客さんによると、孫とおばあちゃんの感じがいいらしい。

映画のキャッチコピー「あなたがもう一度、会いたい人は誰ですか?」は、自分にも他の人にも聞いてみたい質問だ。
「奇跡は、一度だけ、想いをつなぐ。」

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