道教の内経図(だいけいず):象徴を解説

古代中国人は、大自然を身体に取り込み、山水の風景を映し出す身体として、象徴化された内経図を描いていた。(1,800文字)

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道教の内経図の象徴

内経図(だいけいず)は、内丹術の修煉過程を象徴的身体として表現した図である。

北京・白雲観所蔵の内経図

内丹術の修煉を補助するために作られたと考えられるこの図には、仙山の峰々が描かれ、山中から水が麓へ流れ落ちる構図は、山水画のようではあるが、坐する身体の側面図でもある。

複合した図像は、大小宇宙の織り重なった「生命」という、天地自然の複合した要素から成り立っている存在を象徴している。

とーなん

この一枚の図に、壮大なドラマが描かれています。
ウィキペディアを参考に、図の下部から順番に、象徴をまとめました。

下部(下丹田):童男女のペアー、大地の要素(水と火)から生命エネルギーが生まれ働く。

  • 生命の海から「気」を汲み上げるために足を踏んで水車を回している童男と童女のペアの姿。

  • 水車が回り、小さな建物の穴から水が逆流(「坎水逆流」)し、督脈(とくみゃく)と書かれた鼎(かなえ)には火が焚かれ、脊柱に沿った経絡の督脈を気が下から上へ逆流すること(回光逆法)を意味している。

    【逆流した水(陰=女性性)と火(陽=男性性)の交合。】

    ※ 鼎(かなえ)は、中国古代の三本脚の青銅器または土器で、主に調理器として用いられた。

  • その少し上には、牛を使って田(丹田)を耕している図。
    「鐡牛畊地種金銭(鉄の牛が地を耕し黄金の銭を得る)」と書かれ、何事にも動ぜずに丹田で気を煉り育てる象徴として描かれている。

  • その右にある4つの太極図は、下丹田(正丹田)を象徴。(臍の下、生殖器や腎がある位置)

中部(中丹田):成人男女のペアー

  • 大地には木々が生い茂り、督脈の水の流れの上に火が燃え盛っている。

  • また男女のペアーがいて、男が渦巻き(中丹田の象徴)の上に立ち、北斗七星を手にして遊び、その下では女が糸車を回して機(はた)を織っている。

    この2人は、七夕伝説の牽牛(=彦星)と織女(=織姫星)で、織女に織られた布が上に伸びて、督脈を天の「銀河」になぞらえていることを示している。

上部(上丹田=神):老翁(両性具有的)、大自然の太陽(陽)と月(陰)

  • 頭部の2つの丸は両目を表すと同時に太陽(陽=男性性)と月(陰=女性性)を象徴している。

  • 顔の部分の帯状のものは、上側が督脈、下側が任脈を表し、任脈は四角い池の橋に入っている。この池から気は下の中丹田へと流れ行き、生命の循環を象徴している。

督脈(とくみゃく):背骨に沿って走り、全ての陽経を総括する。生命力や精神の軸を司り、脳・脊髄に深く関与。不調時は頭痛や自律神経失調を招く。

任脈(にんみゃく):腹部の正中線を上行する。陰経の総まとめ役で、生殖や消化を養い、「海中の水」と称される。

相互関係:両者は会陰で交差し、小周天の循環を形成、瞑想や気功で活性化され、内面的統合を促す。

  • その下には両手を上げ天を支えている僧が立っている。
    「碧眼胡僧手托天」と書かれた碧眼の胡僧とは、禅宗の開祖とされる達磨大師である。

  • その上には、老翁が腕組みをして座っている。
    「白頭老子眉垂地」と書かれており、白髪で眉が地面に垂れている老子が、上丹田で結跏趺坐して深く坐忘(静功)に入っている。この達磨と老子は、儒家を含めた三教の融合した思想を表している。

  • その背後には、時空を超越した険しい九峯山がそびえ、真中に、昇陽府(太陽が昇るところ)と泥丸宮がある。「一粒粟中蔵世界」と書かれ、修煉を究めることで「道(タオ)」と本来の自己が合一した還虚の境地を表現している。

  • 中部との境には、十二重の塔が描かれており、「十二樓臺藏秘訣(じゅうにろうたいぞうひけつ)」と書かれ、喉が後天の気(食物など)を取り入れる入り口を意味している。

心理臨床と道教の「内丹」

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この記事をまとめるにあたり、ウィキペディアと以下の論文を参考にしました。

黒木賢一, 心理臨床から観る道教の「内丹」(大阪経大論集 第56巻第3号、2005年9月)

本稿では、まず気の象徴的身体について、道教の「丹田」とクンダリーニ・ヨーガの「チャクラ」の類似点を述べ、さらに道教の「内経図」を読み解くことを試みる。次に、西洋における錬金術に相当する道教の「錬丹術」を説明し、「内丹」という身体技法について述べる。最後に、内丹における身体技法の方法論を心理臨床に読み替えることで、東洋的心理臨床について論考する。

黒木賢一 「心理臨床から観る道教の内丹」
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