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夢は、わたしたちが向かうべき方向を教えてくれる(ユング派の夢解釈)

夢分析の目的のひとつは、自分の小さな頭(自我・エゴ)で考えても答えが出なかったり間違ってしまう人生の設計図を、無意識(自己・セルフ)の観点から探ってヒントをもらうことにある。
以下、ユングの高弟M.L. フォンフランツが1963年にスイスのユング研究所で行った講義の記録からその日本語訳を一部改変して抜粋、引用。(1400文字)

じゅうたん模様のパターンのイメージが、夢解釈の参考になります。

夢は無意識の方向を示す。

ユングは、夢は因果的であるだけでなく、目的論的な側面ももっており、心的エネルギー(※リビドー)がどこへ行こうとしているかのヒントをくれるものであると考えた。

※リビドー:精神分析の用語。 フロイトによれば性本能を発現させる力またはエネルギーで快感追求的な性質をもつ(のちには死の本能に対する生の本能の原動力にまで広げて用いるようにもなった。)が、ユングは、あらゆる衝動の源泉となる心的エネルギーをさすのに用いた。

クライエントが分析を受けに来て自分の問題を話す。
   ↓
分析家は「私はあなたより賢いわけではないし、あなたの問題を見通しているわけでもありません。しかし、夢が何を知らせてくれるか見てみましょう。」と言う。
   ↓
分析家とクライエントは、ふたりでクライエントの心理的なエネルギーの流れがどこに向かおうとしているのかを、つまり夢の流れが示しているらしい方向をいっしょに探っていく。
(和訳p.85、原本p.49)

夢は無意識の発明の精妙さを教えてくれる。

そこには人生の秘密の設計図が織りこまれていて、その設計図は人間の意識よりもはるかに知的で、人間が考えうるよりも微妙で優れていることをわれわれに伝えるのです。わたしたちは何度も何度もわれわれの心の中の、あの未知で不可思議なもの、夢の発明者の天才的なわざに圧倒されます。それは、昼間の印象や、以前どこかで読んだことや少年時代の思い出から材料をとり、そこから見事な料理を仕上げるのです。その意味を解釈してはじめて、一つ一つの夢の構成の精妙さと素晴らしさがわかります。毎晩、われわれの中でじゅうたん職人が働いています。彼らが幻想的で微妙な型を作るのですが、あまりにも精妙なため、しばしば1時間も解釈しようと試みてもその意味を見つけることができないことがあります。夢を作り出す無意識のあの未知の霊的才能についてゆくには、われわれは不器用で愚かすぎるのです。しかしこのじゅうたんが、どんな人間の作り上げたものよりも見事なものであると理解することはできます。

M.L. フォンフランツ, p.97

夢はじゅうたんのようなものである。

模様が織り込まれた東洋のじゅうたん※は、一見、複雑でそぞろな模様をもっているが、少し離れて見ると、そこには全体性の模様があるのがわかる。その模様は人の一生の象徴的なパターン(型)を表している。

※ヨーロッパ文明では、オリエントとの接触が始まるまで、じゅうたんが知られていなかった。

私たちは自分自身の人生を、たえず自我の決定に基づいてうち立てて、すべてのことにパターンがあることに気づかないで一生を終える。私たちが夢や無意識に関心をもつのは、このパターンについて少しでも知り、それによって誤りをなくし、自分のナイフで自分自身の内的なじゅうたんを切り裂いてしまうようなことをせず、自分自身の運命に抵抗する代わりにそれを受け入れ実現することを望むからである。個人の人生のパターンがもつこの目的性が、私たちに人生の意味を感じさせるが、じゅうたんの模様にはしばしばそれが象徴されている。
(p.93 – 96)

最後の「自分自身の運命に抵抗する代わりにそれを受け入れ実現することを望むからである。個人の人生のパターンがもつこの目的性が、私たちに人生の意味を感じさせる」の意味がよくわかりませんでした。

わたしはこのように理解しています。

私たちが目先の目標(たとえば出世したい、結婚したいなど。)に向かって懸命に努力しているとき、じゅうたんの模様の一部しか見えていないために、「木を見て森を見ず」状態になり、じゅうたんの全体模様の完成の観点からすると邪魔になる場合もある。
しかし全体像(無意識。上の引用内では自分の運命。)の視野を持ち、全体像を仕上げることをイメージしながら目先のことをすれば、それは自分の運命を受け入れていることになり、その場合は人生の意味が感じられる。
ただし、実際には全体像は把握しきれないので、自分に見える目先の模様を正しく整えたくなってしまうし、それが歪んでいるように見えると不安になるので、結果的に自分自身の運命に抵抗してしまうことが多い。自我が把握できない全体像を、ほんの少しでも知ろうとするのが夢分析の目的のひとつである。


参考文献:M.L. フォンフランツ「おとぎ話の心理学」(氏原訳、創元社1979、原本は1970)

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