「あの人は“身長コンプレックス”がある。」、「彼は“マザコン(マザーコンプレックス)”だ。」などと言いますが、こんな風にコンプレックスという言葉を使うようになったのは、ユングの影響によるものです。ユングは連想実験の手法により、コンプレックスの存在を科学的に証明したのですが、「無意識の経験的証拠」ともいえるこの発見は、当時、師匠だったフロイト(その後、ユングはフロイトと決別しました。)にも喜ばれました。
わたしたちは誰でもコンプレックスを持っています。それどころか「コンプレックスがわたしたちを持っている」とユングが表現したほど、わたしたちはありとあらゆるコンプレックスのかたまりなのです。とくに、わたしたちが、周りの人のなんでもない言葉に過剰に反応してしまうとき、「コンプレックスが刺激されている」と言えます。コンプレックスが刺激されると、わたしたちはまるで「ボタンを押されたように」感情的に反応してしまい、そこでは意識のコントロールがきかないのです。
コンプレックスをなくすことはできませんが、意識できていない自分のコンプレックスについて知ることは、自分を知る上で大きな手掛かりになります。これは、(ユング派の)精神分析が目差すところのひとつです。