アクティブ・イマジネーション Active Imagination

(2024/3/3 更新)

アクティヴ・イマジネーションとは、ごくごく簡単にいうなら、無意識から立ち現れてくるさまざまなイメージを相手に、自我が直接的な接触を持とうとするやり方である。

「アクティヴ・イマジネーション」(誠信書房2000年、老松克博)より

特定の問題や気分、できごと、絵画などに精神を集中することで連想されるイメージから、ファンタジーを展開させるやり方で、覚醒状態で夢を見ることともいえる。

本の副題には「ユング派最強の技法」と書かれています!

内面の空虚と方向喪失への処方箋 

 自分の内面を見つめる方法はたくさんある。代表的なのはさまざまな心理療法だが、そのなかにさえ、深いところまでじっくり探求できるやり方はあまりない。無意識の内奥に隠された「超越的な癒しと救いの力」は、宝の持ち腐れ状態になっているのだ。ユング心理学で用いるアクティヴ・イマジネーションは、そうした力を引き出すために私たちが無意識と直接にやりとりできる、他に類を見ない方法である。

 アクティヴ・イマジネーションは、スイスの深層心理学者、カール・グスタフ・ユング(1875 – 1961年)が発展させた精神分析と心理療法のためのテクニックである。この方法では、私たちが日頃、何気なく行なっている想像という行為が持つ可能性を徹底的に追求する。一般に、日常の想像活動はひどく漠然とした刹那的なものになっている。ある想像を何週間、何カ月にもわたって一つのストーリーとして発展させ続けてみる、ということを試みた経験のある人は、そうはいないだろう。にもかかわらず、ほとんどの人は、想像がもたらすものの限界を知っている気になっている。だが、ちがう。あなたは、その途方もない可能性をまだ知らない。

 無意識は、ふだんは意識されていないのだから、自我にとっては異質な他者である。しかし、異質であるからこそ、自我にはない力を秘めているのだ。そして、イマジネーション、すなわち想像こそが、そうした力にアクセスするもっとも確実な方法である。ただし、何かのイメージを漠然と思い浮かべているだけでは役に立たない。イメージに対するこちら(「私」、つまり自我)からの関わり方のコツを覚える必要がある。

 コツのひとつに、無意識とのやりとりを折衝と見なすということがある。自我は無意識の力を借りたいが、主導権は手放したくない。一方、無意識の側は、自我の協力を得て少しでも意識化され、現実のものとなりたがっている。そこで、自我と無意識とが、イメージという共通の言葉を介して、互いに主張すべきは主張し譲るべきは譲って折衝しようというのが、アクティヴ・イマジネーションの原理なのである。

 イメージにはもともと自律性があるので、自我が邪魔さえしなければ、無意識自身の意志によって勝手に動く。つまり、何かのイメージがふと浮かび上がってくるわけだ。これは無意識からのメッセージである。それに対して自我がある行動をすれば(もちろんイメージの世界で)、そこには自我の意見が反映されることになる。それから、再び無意識に自由に動いてもらう。つまり、次の場面が思い浮かぶに任せるのだが、これは先の「自我の意見」に対する無意識からの主張となっている。そこで、次には自我が……というふうに、いわばイメージのキャッチボールを行ない、一つの物語のかたちにしていくのである。

 こうして自我が無意識からのメッセージを読み解いて意識化していくと、無意識はたとえば神的な存在として登場するようになり、しばしば奇跡を起こす。私たちの魂は震撼させられるのだ。それは現実の世界にも波及して、癒しや救いが経験される。心理的、身体的な諸症状の消失や軽減、精神的な安らぎやある種の洞察ないしは悟りがもたらされるだろう。もちろん奇跡はつねに生じるわけではないが、だとしても、重い苦悩や症状を意味あるものとして抱えていけるようになることが多い。他のいくつかのコツも身につけた上で、アクティヴ・イマジネーションを半年から一年くらい続ければ、それが実感できるようになってくる。考え方や生き方はずいぶん変わっているだろう。・・・

老松克博「アクティヴ・イマジネーションの理論と実践-ユング派のイメージ療法」より

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