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かわいそうな恵まれた子


「かわいそうな恵まれた子」は、アリス・ミラー(1923-2010、ポーランド出身、スイスの心理学者で“元”精神分析家)の「才能ある子のドラマ」(山下公子訳)の中の見出しです。それがどんな子か、内容の一部をご紹介します。(原文のままではありません。)

  • 幸福な、保護された子ども時代を送ったと信じ、そのイメージをもったまま心理療法の門をたたく。
  • 成長後も才能を発揮している人が少なくなく、才能や、やりとげたことに対して、賞賛を受けていることもある。
  • 今まで手がけたことが、すべてうまくいき、すばらしい結果に終わっていたり、成功することが大事な、ここぞというときに失敗することがなかったりする人も多い。
  • ほとんどの場合、1歳でオムツがいらなくなり、1歳半から5歳のときには、上手に弟や妹の世話を手伝うような子どもだった。
  • 両親の誇りともいうべき人たちで、強靭で安定した自信があると一般には思われがちだが、実際にはそうでもない。
  • たとえ成功していても、その裏には、憂うつ、空虚感、自己疎外、生の無意味さが潜んでいることが多い。
  • 自分は偉大な存在だという麻薬が切れたり、「頂点」でなくなったり、あるいは、突然、自分の理想像に合わなくなってしまったと感じたりすると、不安感や罪悪感、恥辱感に苦しむ。
  • 十分以上の内面観察力をもっており、たやすく他の人の身になって感じたり考えたりできる一方で、自分の子ども時代の感情に対しては、まったく何の共感も示さない。
  • 自分が子どもだったころの感情世界を尊重しようとせず、規範に合わせることばかり意識している。
  • 自分自身が子ども時代にたどらされた運命に対する、真の、情動を伴う理解がなく、それにまともに向き合おうとしない。そして、「うまくやらなければいけない」という以外の、自分自身の真の欲求に関しては何もわかっていない。

この、「かわいそうな恵まれた子」が、「子ども時代にたどらされた運命」は以下のとおりです。(原文のままではありません。)

1. たとえば、情動的に不安定な母親(または父親、あるいは両親)がいる。

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2. 「かわいそうな恵まれた子」は、驚くべき能力を発揮して、このような親の欲求に本能的に、つまり無意識に感応し、応答しながら、自分に与えられた役割を果たし始める。

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3. このようにして、 「かわいそうな恵まれた子」は、親の「愛情」を確保する。子どもは、自分が役に立っていると感じ、それが子どもに存在意義を与えてくれる。

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4. 適応し、順応する能力が開発、完成されたそのような子どもたちは、自分の親の親(打ち明け相手、慰労者、忠告者、支え)になるばかりでなく、自分の兄弟姉妹に対する責任も肩代わりするようになったりもしながら、他の人間の発する無意識の欲求信号に敏感に反応する感覚をつくり上げる。

ここから先は、あまり引用したくないのですが(苦笑)、ミラーはこう続けます。「このような人たちが成長した後、心理療法を職業として選んだとしても不思議はありません。子どものころ、このような育ち方をしていなければ、いったい誰が、一日中他人の無意識のなかで何が起こっているのかを探りつづけるのが面白いなどと思うでしょう。」!

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