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ミッドライフの心理学

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※ストックホルム日本人会の会報2011年冬号に掲載した内容です。

スイスの分析心理学者ユングは、ミッドライフにおいて、人は、大切な人生の転換期を経験すると考え、これを肯定的な意味をこめて「生の転換期(独語:レーベンスヴェンデ)」と呼びました。

離婚、再婚、転職、離職、子供の巣立ち、肉親の死、家族や自分の病気や事故・・・などによる大きな環境の変化によって、人生のしきりなおしを迫られることもあれば、平穏無事な生活の中で、急に、今まで価値があると思っていたものが無意味に感じられるようになって走り続けられなくなってしまったり、これといった理由もないのに、抑うつ気分に悩まされることがあったりするのがこの時期です。

「出世頭として周囲からうらやましがられているエリート社員」や「何の不自由もない暮らしの中で幸せそうに見えた主婦」の自殺や失踪、社会的に立派な地位や身分のある男性が若い女性に“狂って”すべてを失う、良妻賢母の鏡のようだった人が、お酒やギャンブルや買い物にのめりこんで中毒になる・・・といった事例では、その人たちが、深刻な心の病にかかっていたというよりも、たまたまミッドライフ・クライシスの落とし穴に落ちてしまったといえる場合が少なくありません。

「クライシス」を経験してもしなくても、内的なこころのありかたに何らかの変容が生じるのは、ミッドライフにはとても自然なことで、この変容は、わたしたちの後半の人生に豊かさや充実感をもたらしてくれるものだともいえます。

ところで、このミッドライフが一体何歳ごろを指すのかというと、わたしはその範囲は、中高年を含む、30~70歳の広いものだと考えています。「三十にして立つ」とは孔子の言葉ですが、曲がりなりにも「おとな」として、精神的、経済的に自立したり、価値観や人生観をそれなりに確立してから、ミッドライフは始まります。その後は千差万別で、30歳で、仕事や家庭、「安定した生活」を手に入れたと思った矢先に、思いがけないこころの転換期を迎えて立ち止まる人もいれば、そのまま順風満帆に定年まで過ごしたあと、転換期が来ることもあります。

おとなへの通過点だった思春期が、誰にでも同じ時期にあったのに比べると、ミッドライフの転換期は、時期も内容も多様なのです。

ともあれ、ミッドライフは、「まだまだこれから!」という時期です。107歳で亡くなる直前まで現役だった、彫刻家の平櫛田中は、「六十、七十、はなたれ小僧 男盛りは百から百から」という有名なことばを残しています。(冒頭の写真は平櫛田中の書。)

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